地方における鑑賞教育を探るメディア「アイアイ」オープン
地方における美術鑑賞・鑑賞教育の取り組みについて鳥取県内外の実践者にインタビューし、課題や可能性を探るメディアサイト「アイアイ」が2022年11月に公開されました。
「アイアイ」は、全国で鑑賞教育に携わる10組の実践者の取り組みをインタビュー形式で調査研究していくプロジェクト。2022年、約1年間かけて取り組み、インタビュー内容が丁寧に記録され、順次公開されています。
プロジェクトを立ち上げたのは、鳥取市を拠点に活動するデザイナー/コーディネーターの蔵多優美さん。アートやデザイン領域のコーディネートやマネジメントの他、2021年からは対話型鑑賞についても学び、ファシリテーターとして教育現場や美術館、ギャラリーなどで実践を行っています。当サイトでも対話型鑑賞のレポートを執筆してくれています。
蔵多さんは、「美術作品は誰もが自由に味わえるものであるのと同時に、特に現代美術作品の鑑賞には知識や技術が必要になることもある。美術館やギャラリーが少ない地方では、アーティストと鑑賞者をつなぐ鑑賞教育及びコンテンツづくりがまだ僅かしか目にする機会がないのでは」ということに着目。自分が生まれ育った鳥取の地で何かできないかと今回のリサーチプロジェクトをはじめました。「アイアイ」というタイトルには、見るという行為「Eye」と、私の「I」、他者と対話する「会い」の3つの意味に「アイ」という言葉に込めています。
10組の実践者には、中学・高校の美術教諭、大学で鑑賞教育にも取り組む社会学者、全国のアートフェスティバル教育プログラムの開発に携わっている専門家、美術教育史の研究者など、多彩なメンバーが並びます。
1本1本が読み応えのある文章になっており、現場に身を置かないとなかなか知りえない現在の美術教育の様子が垣間見えたり、それぞれの専門家が試行錯誤しながら「美術」「鑑賞」の意味を深め、捉え直し、実践している様子が伺えます。また、美術鑑賞・鑑賞教育が、自分自身を表現したり、他者とのコミュニケーション力を育むためのひとつの方法であり、生きる力を育んでいくものであるという考え方にも納得させられるものがありました。そして、2025年春に開館予定の鳥取県立美術館に設置される「アート・ラーニング・ラボ」への期待感や教育現場と美術館の連携の必要性へ訴えなども見逃せないところです。(5月中旬ごろに鳥取県立博物館美術振興課にインタビューした記事を公開するとのこと。)
美術や鑑賞教育に興味のある方はもちろん、「美術って、アートって、なんだかよくわからない」と普段思っている方も、ぜひご一読ください。美術の現場で働く人たちの思いに触れ、美術がより身近に感じられました。
「アイアイ」 ―地方における鑑賞教育の取り組みをめぐるメディアサイト―
URL|https://aiai.nokanuchi.com/
プロジェクトリーダー|蔵多優美
編集・執筆|野口明生、木谷あかり、犬間東悠、谷口茉優
アドバイザー|竹内潔(鳥取大学地域学部准教授)、佐々木友輔(鳥取大学地域学部准教授)
ロゴデザイン・イラスト|秦歩美
WEBサイト制作|S.K.Works、bank to LLC、蔵多優美
サポート|古林千明、にゃろめけりー、高橋遥子、藤森このみ、小寺春翔、三宅航太郎(MAA)
助成|公益財団法人小笠原敏晶記念財団 2021年度 調査・研究等への助成(現代美術分野)
プロフィール|
蔵多優美(くらた・ゆみ)
1989年鳥取市生まれ。京都精華大学デザイン学部卒業。IT・Web企業数社、鳥取大学地域学部附属芸術文化センター勤務を経て、デザイン制作やイベント企画運営、アートマネージメントなどを修得。「ことばの再発明」共同企画者。2021年5月より屋号「ノカヌチ」として鳥取市を拠点に活動開始。「デザインを軸とした解決屋」を掲げ、企画運営PMやビジュアルデザイン制作を得意領域とし、教育や福祉、アート分野の様々なチームと関わりながら活動中。対話型鑑賞ナビゲーターとして県内で実践やボランティア活動をする中で「美術鑑賞教育×対話」に関する調査研究に取り組む。2023年度は母校である鳥取城北高等学校で非常勤講師として美術を担当している。吉田璋也プロデュースの民藝品を制作していた鍛冶屋の末裔。
蔵多さんの対話型鑑賞に関するレポート記事|
◆「あなたもファシリテーターに!」鳥取県立美術館開館に向けた対話型鑑賞実践#1
◆「あなたもファシリテーターに!」鳥取県立美術館開館に向けた対話型鑑賞実践#2
◆「対話型鑑賞による学びの可能性ー本当に役に立つの?」#1
◆「対話型鑑賞による学びの可能性ー本当に役に立つの?」#2