波田野州平
映像みんぞく採集
#10 関金の型ガラス

映像作家の波田野州平を中心に結成された記録集団「現時点プロジェクト」が鳥取県の各地を巡って、観光案内では紹介されない(されるはずのない)場所や物事に熱視線を注ぎ、映像でレポートを提出します。日々の視界を少しだけ広くする報告書。お忙しい1日の隙間にご覧ください。


かつてはどの家にも必ずあった型ガラス。だが今では、新築の住宅にその姿を見かけることほとんど無い。
古い住宅が立ち並ぶ温泉地、倉吉市関金にやってきた写真家セス・ハイが興味を持ったのが、彼の故郷アメリカには無い、その型ガラスだった。
彼はこの型ガラスを、日本独自の間(あわい)の文化と解釈した。
アメリカでは外と内を区切る場合、カーテンかブラインドで明確に境界線を引く。外部を遮断して、私的空間を作り上げる。しかし型ガラスの場合、向こう側がぼんやりと伺える。型ガラスは、内と外を区切りながらも、向こう側への配慮が伺えると言うのだ。
さらに彼はガラスの向こう側、「透けて見えるもの」に注目する。
大量生産された同じ柄の型ガラスでも、「透けて見えるもの」によって、唯一のものになると。
あとは、彼の写真を見てもらえば充分だろう。
ガラスの向こうで、星雲が世界を創造しているのを。

ぜひあなたの身近にある型ガラスと、その向こう側ものぞき見てください。
それでは次の隙間でお会いしましょう。
写真:セス・ハイ
ライター

波田野州平

鳥取生まれ東京在住。辺境と中央を往復して制作(映画を作ったり、ライブを撮ったり、ミュージックビデオを作ったり)しています。今は記録メディアとしての映像の役割にとても興味を持っています。