レポート:「なんだこれ?!サークル」とっとり版・なんだこれ?!ハンドブックをつくる
ワークショップ&プロジェクト #2

「トットの美術館プロジェクト」の主要な活動のひとつとして展開している「なんだこれ?!サークル」。2020年度はオンライン開催で、鳥取の人たちがアイディアを持ち寄って新しいハンドブックづくりに挑戦しました。新設される鳥取県立美術館に興味津々のトットライター蔵多が今回のプロジェクトの様子をレポートします。


ワークショップ「なんだこれ?!のつくり方を見つける」
ワークショップは2021年2月8日(月)-11日(木)の4日間かけて開催。Zoom上の対話式ワークショップで、参加者は『①「つくり方」になりそうなアイディアをいくつか考えてくる』『②可能であれば、それぞれに簡単な説明と参考となるものを用意する』というお題を事前に課され、ブッチーぶちょうと水田さんと約60分程度ディスカッションをしながら、ハンドブックに掲載するための具体的なテキストに落とし込んでいくというものです。
ここでは、プロジェクト参加者の井澤ゆうかさんと青江由希さんのそれぞれのやりとりを取り上げ、ブッチーぶちょうと水田さんとの対話の中でどんな「つくり方」が見つかり、ハンドブック掲載に向けてどんなやりとりがあったのか、をまとめていきたいと思います。

絶対に終わらせない(でもいつか終わる):井澤ゆうかさんが見つけたなんだこれ?!のつくりかた
井澤さんは課題を考えるにあたり、ご自身のお子さんの行動を観察し、1週間「なんだこれ?!」を意識しながら生活してみて、リストアップしたものをお話ししてくださいました。ご自宅の壁にお子さんたちが自由に絵を描けるように真っ白に塗りつぶした場所を用意している井澤さんは、子どもの視点に寄り添うことを大切にされています。「とにかく並べてみる」や「床を何かで敷き詰める」、「模様を文字にしてみる」など、子どもの視点に立って見えてきたことが「なんだこれ?!」になるのではないかと発表してくださいました。


これを受けて、ブッチーぶちょうから「どれもとてもおもしろいけれど、このリストはアーティストの視線ではないか。つまり、批評することありきの考え方になってしまっている。サークルの前提として、子どもの自由な発想→批評性から解き放たれた部分が大事。このリストの手前に考えられたことを「なんだこれ?!」としてみましょう」とご意見が。井澤さんが「とにかく並べてみる」の中でお話しされていた「ものがある限り終わらない(自分なら「片付ける」に意識が行くけど、子どもはひたすら続ける)」というところに着目し、「終わりをつけない」ということを掘り下げてみることに。

「なぜ終わるのか?」「時間や空間、エリアの狭さが制限になるかも」「やっぱり終わりは来る。飽きるとか疲れるとか。絶対に終わりはあるんだけど、限界までやってみる、というのが良い。」「終わりをつける、ってなんだろう」「終わらないものをはじめること」

といった具合に対話を重ね、永遠を目指すものを意識・連想させる言葉として「絶対に終わらせない(でもいつか終わる)」というなんだこれ?!のつくりかたが生み出されました。


この言葉を受けて、それぞれが思いつくもの・連想するものを伝え合うことに。

井澤さんは「やじろべえが思いついた。自分でバランスを取り続けるという行動を伴うから。」

ブッチーぶちょうからは、「この言葉には少し悲しいニュアンスがあると思う。たとえば、いつまでも遊んでいたいけれど日は沈むとか。ずっとやっていたいけど、いつか終わりが来る、そこには絶望しかない。だけど、始まりはポジティブであってほしい。」とお話しされ、ご自身のエピソードも交えながら、完成の見えない作品として「サクラダ・ファミリア(アントニ・ガウディパイセン)」が近いのではと。

水田さんからは未完成の作品として「銀河鉄道の夜(宮沢賢治パイセン)」を連想したとのこと。

「終わらせない」をやるときの注意点、守るべきポイントについても意見を交わしながら、ハンドブックに具体的に掲載するために三者間で擦り合わせを行っていました。

◯◯になりきってみる:青江由希さんが見つけたなんだこれ?!のつくりかた
青江さんはオリエンテーションで見た映像やブッチーぶちょうのアドバイスを受けて身近なパイセンに聞いてみるに聞いてみるなど、様々なアプローチで課題に挑戦。その中でご自身が美術大学で版画を専攻して学ばれていた中で自分の跡、痕跡を残したいという考えで青江さん自身の人拓を作品として作り続けていたとお話ししていただきました。


それを受けて、ブッチーぶちょうから「「痕跡を残してみる」というのは、コピーするという印象。「真似」というのも、そっくりそのまま完コピするし、痕跡を残すのも行為を記録するものだと思う。ただ人を真似しても「なんだこれ?!」は生まれないけれど、徹底的に真似をすると「なんだこれ?!」が生まれるのかも。」とご意見が。さらにサークル活動の初期に、参加者の1人から「栗きんとんになる」というアイデアがあったとお話しされ、それを受けた青江さんから「壁になりきるパフォーマーもいるので、気持ちの問題でそうなれるのではないか」と。

対話を重ね、「何かの真似をする。なりきれないけれどやってみる。」は結構「なんだこれ?!」になりそうだということで、「〇〇になりきってみる」というなんだこれ?!のつくりかたが生み出されました。


この言葉を受けて、それぞれどんなものになりきってみたいかを伝え合うことに。

青江さんは「手動の鉛筆削り器(ハンドルを回してガリガリ削る差し込みタイプ)とか、体温計。音が鳴るところとか、再現することは難しいけれど、真似しようとして見るとおもしろそう。形として形態模写することはできないけれど、一度擬人化して、その気持ちになってみると良いかも」

ブッチーぶちょうからは、「真似するとしたら生き物」。水田さんからは「ミシンになりきってみたい」と。

さらになりきる時のポイントを考えていき、「人とか生き物とか、本来「気持ちが入る」とされるものとは違うものだ」「無機物的なものは、カタチになりきるイメージ。外観からそのものになる。外観からなりきったら、そこに気持ちが入るのでは」「真似するものをしっかり観察して、細部まで真似ることで、「なんだこれ?!」になっていく」「中途半端が一番おもしろくない。ちょっとだけ似てる、とかはナンセンスで「なんだこれ?!」にはならない。どちらかに振り切ってみよう」「「なりきる」だから「真似」とは違う。そこは明確に分けて考えるべき。」といった具合に対話を重ね、ハンドブックに具体的に掲載するために三者間で擦り合わせを行っていました。

《つづく》


開催予告
「なんだこれ?!サークル」とっとり 2022 オープンぶしつ

【よなご】https://fb.me/e/1cbXlg1oK
日 時
|2021年2月23日(水・祝)
場 所|ちいさいおうち(鳥取県米子市皆生温泉2-9-36)
タイムテーブル
10:00-14:00 こうかいかつどう
14:00-16:00 ハンドブックづくり
16:30-18:00 なんだこれ?!もちより上映&発表会

【とっとり】https://fb.me/e/35iGkrlzS
日 時|2021年2月27日(日)
場 所|トりんく まんまる(鳥取県鳥取市元町275)
タイムテーブル
13:00-16:00 こうかいかつどう&ハンドブックづくり
17:00-18:30 なんだこれ?!もちより上映&発表会

参加費
|300円(ハンドブックのざいりょう代、ほけん代)

※いつ来ても、いつ帰っても、ずっといてもOK!
※「なんだこれ?!サークル」とっとり版ハンドブックがほしい人は、”オープンぶしつ”に参加するか、ちいさいおうちにお問合せください。

申込・問合せ|ちいさいおうち
683-0001 鳥取県米子市皆生温泉2-9-36
090-2409-7984(水田)
chisaiouchi@gmail.com

主催|子どもの人権広場
共催|鳥取藝住実行委員会(トット編集部)、鳥取県
助成|令和3年度 鳥取県 アートによる地域活性化促進事業補助金、令和3年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業、2021年度ごうぎん鳥取文化振興財団

ライター

蔵多優美

1989年鳥取市生まれ。京都精華大学デザイン学部卒業。IT・Web企業数社、鳥取大学地域学部附属芸術文化センター勤務を経て、デザイン制作やイベント企画運営、アートマネージメントなどを修得。「ことばの再発明」共同企画者。2021年5月より屋号「ノカヌチ」として鳥取市を拠点に活動開始。「デザインを軸とした解決屋」を掲げ、企画運営PMやビジュアルデザイン制作を得意領域とし、教育や福祉、アート分野の様々なチームと関わりながら活動中。対話型鑑賞ナビゲーターとして県内で実践やボランティア活動をする中で「美術鑑賞教育×対話」に関する調査研究に取り組む。2023年度は母校である鳥取城北高等学校で非常勤講師として美術を担当している。吉田璋也プロデュースの民藝品を制作していた鍛冶屋の末裔。