SIDE COREワークショップ「ひみつの石をつくろう!」レポート

2026年3月22日、鳥取県立美術館の企画展〈CONNEXIONS〉の関連イベントとして、出展作家SIDE COREによるワークショップ《ひみつの石をつくろう》が開催されました。当日の様子をトットライターの新松寛明がお届けします。


CONNEXIONS展関連イベントとして開催された、出展作家SIDE CORE(サイドコア)によるワークショップ《ひみつの石をつくろう》に参加した。SIDE CORE(サイドコア)は高須咲恵、松下徹、西広太志という3名のコアメンバーに映像ディレクターとして播本和宣が加わったアーティストユニットだ。SIDE COREはストリートカルチャーにルーツを持ちながらも、その実践を単なる抵抗の身振りとして観念的に捉えるのではなく、都市のインフラや身体といった物質的なリアリティの側から捉え直していくところに、SIDE COREの表現の面白さがある。今回のワークショップも、そうした彼らの方法を感じられるものとなっていた。
ワークショップ当日は松下徹さんが講師として登壇し、30名を超える参加者で賑わった。会場は終始にぎやかで、子供の参加者も多く見られた。ワークショップの内容自体はきわめてシンプルだ。参加者はまず美術館の敷地内で手頃な石を探し、それを洗って汚れを落としたあと、作業スペースで蓄光塗料を塗る。乾燥と塗布を数回繰り返し、塗料が定着したところで、最後に暗い部屋へ移動して石が光る様子を確かめる。手順だけ見れば素朴な工作に近いが、松下さんの説明を聞くと、このワークショップが単なる子ども向けの造形遊びではないことがわかってくる。

手を動かしながら説明をする松下徹さん(中央)

冒頭で松下さんは、完成した石は持ち帰ってもいいが、元の場所に戻してみるのも面白いのではないか、と提案していた。一見するとただの石にしか見えないものに、自分だけが知っている特別な関係、つまり「秘密」を与えてみる。その発想は、今回のSIDE COREの出展作品と重ね合わせると、その意味が理解できる。

展示作品の一つ、《rode work》は、夜間の道路工事に使われる照明を用いた立体作品だ。そこで用いられている照明には電波時計と同じ仕組みが内蔵されており、全国各地の工事現場と光が同期しているのだという。鑑賞者はその事実を知り、目の前の光と同期するどこかの工事現場を思い浮かべる。このように都市のインフラと私たちの想像力の交差するところに、確かに目の前の現実とは違う、他の誰かのリアリティが現実味を帯びて立ち現れてくる。

 

このワークショップもそうした、現実の中から別の層を取り出してくるための手続きだったとも言える。拾ってきた石に蓄光塗料を塗り、暗闇の中で光らせる。単純な作業ながら、昼間には何気なく見過ごしていた石が、急に別の現実への入口のように感じられてくる。「秘密の石」を美術館の敷地内に戻すという行為は、《rode work》がそうであるように、目の前の石が、誰もいない閉館後の美術館の片隅で光を放つのを想像することでもある。このように日常の中に、別のリアリティへ通じる小さな回路を仕込むこと。SIDE COREの作品や活動は、私たちの中に、そうした知覚のモードの切り替えを引き起こすように感じる。
ワークショップの最後には、参加者全員で暗室に移り、皆の石を床に並べて照明を落とす。すると、それまではただの石だったものが緑の光を帯びて浮かび上がり、子どもたちから歓声が上がった。その光景は単なる演出ではなく、ものの見え方が条件によって反転する経験だった。

今回のワークショップで印象的だったのは、別のリアリティへの想像力が単なる空想で終わっていないことだ。実際に石を拾い、洗い、手を動かして塗料を重ねる。その具体的な作業があるからこそ、「秘密」は単なる思いつきではなく、奇妙なほどに現実味を帯びてくる。思考と現実、想像力と物質のあいだを行き来しながら、目の前の現実に少しだけ穴を開けてみるような遊び。そうした具体的な身体的実践の中に、別の現実への確かな手がかりを感じられた。


CONNEXIONS展関連イベント
SIDE COREワークショップ「ひみつの石をつくろう!」

[日時]2026年3月22日(土)  10:30-12:30
[講師]SIDE CORE
[対象]どなたでも ※小学3年生以下は保護者同伴

企画展〈CONNEXIONS コネクションズー接続するアーティストたち〉
会期|
2026 年2月7日(土)~3月22日(日)※終了しました
会場|
鳥取県立美術館 3F企画展示室、1Fひろま
主催
| CONNEXIONS 展実行委員会(鳥取県、鳥取県立美術館パートナーズ、日本海テレビ、TPlat)
公式サイトhttps://tottori-moa.jp/exhibition/view/exhibition-04-2/

 

ライター

新松寛明

東京工業大学博士課程単位取得満期退学。哲学・思想研究者。ユクスキュルを中心とする生命記号論やメディア論、記号に関心がある。都市と感性、記号・意味・メディアの問題を横断的に考察。現在は鳥取県で生活しながら、翻訳、批評などを通じて思索を社会に開く試みを行っている。