蛇谷りえ(うかぶLLC 共同代表)♯2
ものづくりを通して、人と出会う、何かと出会う

2012年に鳥取県湯梨浜町にゲストハウス&カフェたみをオープンして10年。独自の方法で地域の魅力を伝え、多くのファンを町に呼び込んできたうかぶLLC。2回目は、鳥取市にオープンしたY Pub & Hostelのこと、そして、コロナ禍で新たにはじめた取り組みについて、共同代表の蛇谷りえさんに伺いました。


- たみに続いて、2016年には鳥取市にY Pub & Hostel(以下、Y)をオープンされていますよね。

蛇谷:たみができて4年経った頃、まだ鳥取駅の近くにはゲストハウスがなくて。砂丘に行くのに、みんなわざわざ鳥取駅から松崎駅に来て、たみに泊まって、そして次の日に戻って砂丘を観に行く人が多かったんですよ。だから、たみに来るならのんびりしてほしいけれど、みんな砂丘に行くなみたいな感じ。砂丘か出雲大社なんですよね。

― たみは観光地じゃないところに作ったけれど、みんな観光地には行くという…。

蛇谷:そう。だから、鳥取市付近にゲストハウスができていたら踏ん切りがついたんですけれど、なかなかできなくて。でも、その時にはもう鳥取市にもいろいろなつながりがあったし、単純に鳥取市が好きだったので、私たちがやろうって。それで、本間公さん(1)に相談したら、数日後に「僕のビルでやらない?」と返事がきて。信頼できるオーナーだし、ネットワークもあるので、はじめることにしました。

鳥取駅から徒歩5分のY Pub & Hostel(うかぶLLC提供)

- 来る人の層は、たみとは違いますか?

蛇谷:全然違いますね。やっぱり鳥取駅の近くだけあって、ビジネスマンもいるし、観光客もいる。たみは、たみに来ること自体が目的の人もいるし、もっとローカルな場所に行きたいって思う観光客も来たりするけれど、Yに来る人の求める距離感や関心のバリエーションは幅広いですね。でも、Yで鳥取のあちこちや松崎(2)を紹介させてもらうと、日にちが足りないからとまた来てくれるリピーターもいます。最近では、Yに来る人たちの中には、何となく他のホテルにはない文化っぽさを感じて来てくれる人もいるので、ようやく伝わってきたのかなって思いますね。

- コロナの影響はかなり大きいと思うのですが、活動に変化はありましたか?

蛇谷:コロナが国内で広がりはじめた2020年4月の初めに自分らでセルフロックダウンして、7月に再開するものの、何度か店を開けたり閉めたりを繰り返している状態です。Yは飲食店もやっているのですが、客席数を減らさないと距離を保てないので、空いたスペースはギャラリー企画にして、私と三宅くん(3)で各地の作家さんにお願いして、展示販売をしていました。今年は、去年と同じだとお客さんとの関係が消費的になることが気になったので、今年3月に行った展示「サイネンショー」をきっかけに、私たちがものづくりに関わるようなプロジェクトをはじめました。

- 具体的にはどういうプロジェクトですか?

蛇谷:「サイネンショー」は、京都で活動されている2012年にスタートした数名の陶芸家と多数の陶芸未経験者による協同プロジェクトで、3月にたみで展示をしてもらいました。その時に鳥取の不要な陶器を集めて、それを5月に穴窯で“再燃焼”しました。そして秋に再びたみで展示する予定です。今、私たちとサイネンショーチームで本の制作も進めていて、大阪で出版記念イベントをする予定です。今までは場所を通した交流とか人と出会うようなことをしてきたんですが、作家やスタッフらが関わってものづくりを通して人と出会ったり、何かと違う世界にアクセスしたいと思って続けていますね。

2021年5月、地域の人たちとうかぶスタッフで窯だき体験(うかぶLLC提供)

- 今後はものづくりをしていく機会が増えていきそうですか?

蛇谷:そうですね。この他にも、岡山のデザイナーと一緒に鳥取の素材を使ったプロダクトをつくろうとしています。今は鳥取のリサーチをしていて、具体的にどうなるかはまだわからないですが、ゆくゆくは鳥取で発表したいなと。さらにオリジナルの自社製品もいろいろつくる予定で、これは食べ物に限らず、「うかぶ」でしかつくれないようなものをつくりたいです。外からいろいろ輸入してきたけれど、私たちで生み出したいっていう思考になったのかなと思います。

- 活動の幅が広がってきているようにも感じたのですが、今は何人で活動されているんですか?

蛇谷:今は10人ですね。共同代表の私と三宅くん以外に、社員2人、アルバイト6人です。20代から40代まで、大学生もいますし、移住者やUターンの人もいます。宿と飲食をやっているので、店先に立って受付をしたり、料理をしたりというのが通常の業務なんですけれど、人手不足なので、新たにスタッフを募集しています。店番だけでなく、いろいろなプロジェクトにも関わってもらいたいなと思っていて、ものづくりに興味がある人がいたら、ぜひ仲間になってほしいですね。

社内イベント「うかぶ春の山登り」は、鳥取県三朝町の若杉山へ(うかぶLLC提供)

- こういう人に来てほしいという具体的なイメージがあれば教えてください。

蛇谷:年齢も経験も特に問いません。料理の資格がなくても大丈夫です。学生さんや新卒の方もOK。転職中で今後の人生どうしようかなっていう人も。強いて言うなら、ものづくりに興味がある人がいいですね。料理も場所も何かをつくることに変わりないですし、今進めているプロジェクトをおもしろがって一緒にやってほしいので。そういう仲間を探しています。アルバイト、ヘルパー、インターン、とにかくいろいろなチャンネルを用意しているので、好きなところから関わってほしいです!

- 10年活動してきて、思いがけずコロナの流行もあり方向転換を余儀なくされているようなところもあると思うのですが、現段階での今後のビジョンはどういう風に考えていますか?

蛇谷:ビジョンというか今のいろんな問題がある中で考えていることは、改めて、「うかぶ」でしかできないものづくりをしたいです。その一つに集団性。私だけで何かをつくるのではなくて、みんながいたから生まれるようなつくり方。そして鳥取の環境。この土地にはおもしろい思考の人たちがいて、いろいろな情報が集まります。それらをカタチにして、遠くまで発信できたらいいなって。それが結果的に鳥取を知るきっかけになると思うし、いま鳥取に来られなくても楽しんでもらえると思うので、何かと実験していきたいですね。

- できあがるものがすごく楽しみです。また紹介できたらいいなと思いました。続きも是非トットで取材させてください。

#3へ続く

トップ写真撮影:水田美世


1.飲食店や美容院、薬局など、県内のおしゃれなお店の内装を数多く手掛ける工作社の代表。
2.ゲストハウス&カフェたみは湯梨浜町のJR松崎駅前にある。
3.うかぶLLC共同代表・三宅航太郎さん。


うかぶLLC スタッフ募集

◆アルバイトスタッフ(若干名)

勤務場所:Y Pub&Hostel(鳥取県鳥取市今町2丁目201)
業務内容:飲食調理作業、宿泊者との接客対応
就労時間:1日6時間程度(土日平日含めて週3.4回の 昼間の時間帯に入れる方)
給与:時給792円(22時以降は25%UP)
雇用期間:随時(採用決定時期に応じて1年ごとに契約更新)

【応募条件】
・国籍、年齢、性別は問わず
・多様な価値観の中で、自立する勇気を持っていること
・英語が話せる、あるいは積極的に独学する意思のあること
・うかぶLLCの方針を理解し、チームワークで働くことができること
・料理や場所、イベント、制作などのものづくりに関心がある人
・飲食店、宿泊業経験者、優遇

【選考方法】
興味のある方は、info(at)ukabullc.com まで、希望する部門を明記の上、
履歴書と自己PR文(A4サイズ1枚程度)をお送りください。
こちらから面接(もしくはskype面接)の日時を連絡させていただきます。

【問い合わせ】
TEL&FAX:0858-41-2026(たみ)
info(at)ukabullc.com

※ヘルパーとインターンの採用は今後の営業状況によります。ご興味がある方はまずお問い合わせください。


蛇谷りえ(うかぶLLC 共同代表)
1984年大阪生まれ。2012年に「うかぶLLC」を設立し、共同代表の一人。うかぶLLCでは、鳥取県は湯梨浜町にある「たみ」と、鳥取市にある「Y Pub&Hostel」を経営している。また、鳥取大学地域学部教員の合同ゼミ「鳥取大学にんげん研究会」やアートプロジェクト「HOSPITALE」のマネジメントなどの企画や運営業務をしている。

うかぶLLC
http://ukabullc.com/

たみ guesthouse&cafe
〒689-0712 鳥取県東伯郡湯梨浜町中興寺340-1
TEL&FAX:0858-41-2026
http://www.tamitottori.com/

Y Pub&Hostel
〒680-0822 鳥取県鳥取市今町2丁目201 トウフビル1F・2F
TEL: 0857-30-7553
http://y-tottori

ライター

濱井丈栄

1979年広島市生まれ。フリーアナウンサー。元NHKキャスター・リポーター・ディレクター。広島・鳥取・東京に勤務し、自ら取材し自分の言葉で伝えることを生業にしてきた。2014年、夫の転勤で再び鳥取へ。同年立ち上がった「鳥取藝住祭」の事務局にたまたま声をかけられたことをきっかけに、アートをいかした地域づくりに関わるようになる。最近の趣味は、さまざまな作家さんのワークショップに行くこと。特にものづくり系が好き。photo:田中良子