道路の可能性を広げる2日間
YONAGO STREET WALK for everyday!!
3月22日Art Dayレポート

鳥取県西部のまち米子市では、前年度に引き続き、駅前通りの車道空間を活用した実証実験が2026年3月に1か月間掛けて実施されました。このうち22日(日)はArt Dayとしてアートや様々な表現活動の場として公共空間を活用する試みが行われました。ブックスタンド担当としてArt Dayに参加した髙木善祥さんが当日の様子を伝えます。


米子市内で行われた「道路の可能性を広げる2日間 YONAGO STREET WALK!!」の2日目、3/22(日)の「Art Day」に参加した。出店者として本を売りつつ、アートが街の課題や公共空間に開かれ、コミットする可能性を考えながら、この一日を楽しんだ。

画家・竹安桜子さんのライブペインティング。大きなキャンバスの下半分は、細密に描かれた米子の街並み。上半分は真っ白いままで、その空いたスペースに、以前から撮りためていたという米子の面白い風景の写真を貼り付けていく。そしてさらにペンキで色付けていき、たくさんのギャラリーに見守られながら、作品が作られていった。

制作の合間に来場者との会話を楽しむ竹安さん
ライブペインティングには来場した方々も参加
終盤には竹安さんが8月から留学するデンマークの言葉で「春の故郷」を意味する文字を描き入れた

時折、小さなお子さんと一緒に色を作ったり、観覧者の方たちと話している姿が見えた。会話の内容までは聞き取れないが、もしかしたらアイデアを取り入れているのかもしれない。制作過程そのものが開かれていて、過去と現在の街の記憶を再構築するプロセスをまじかで見られる、貴重な体験だった。

皆生温泉の「ちいさいおうち」を拠点に年齢問わず、これまでにない表現を探して活動する「なんだこれ?!サークルとっとり」による、表紙づくりのワークショップ。2021年に作成されたとっとり版ハンドブックの表紙をつくるというもので、親子での参加が多かったように思う。出来上がった作品をいくつか見せてもらった。シンプルなボーダー模様のものもある一方で、素材の違いを無視したアンバランスな作品も。一見しただけではそれが大人が作ったのか子どもが作ったのかは分からなかった。

オリエンテーション後に「なんだこれ?!」をつくるヒントをカードでランダムに2つ選び、表紙づくりで実践していく
「やりにくい方法でやってみる」と「同じことをものすごくくり返してみる」という2つの「なんだこれ?!」に挑戦中の親子
表紙づくりは年齢を問わず楽しめて、ハンドブックを持ち帰っていただくことでサークルの紹介にもなる

美術家・木村佳奈さんによるプロジェクト〈FROM/TO〉。道行く人に声をかけ、透明な台の上に足をのせてもらい、足の裏の写真を撮影するというパフォーマンス。会場の駅前通りや同日開催されたよなご・マルシェで声をかけたりして、「街を歩く」行為の断面を写し取る。その人の人生は、顔や手や指先ではなく、普段は人に見せることがないということも含めて、身体を支える足の裏にあらわれる、のかもしれない。

木村さんからの突然の依頼に驚きつつ、楽しみながら受けてくださる方が多かった
米子を拠点とするアーティスト・イン・レジデンスのプロジェクト〈AIR475(エアヨナゴ)〉の招へい作家・村上慧さんも足の裏を提供
同日に湊山公園で開催された「よなごマルシェ」の会場でも実施。この日は両会場を繋ぐ巡回バスが無料だった

南部町をベースに活動する「目と根のプロジェクト実行委員会」のメンバーによるタロットカードブースでは、ほとんど途切れることなくお客さんが来られていた。
私自身は占いに全く興味がないので、まずそのことが驚きであり、幅広い年齢層の方々が意外とカジュアルに占ってもらうことにも、さらに驚く。
特に印象的だったのが、家族と一緒に来ていた小学生の男の子。緊張しながらも真剣な面持ちで、時間をかけて対話していた。
「自己を開く」には他者が必要で、それが街中で必然的もしくは偶発的に起こるのは、とても面白い現象だった。

タロットカードブースは“オープンな聖域”をイメージ
目と根のプロジェクト実行委員会がアーティスト・イン・レジデンスで冬季に招聘した可能性集団「ヴァルナブルな人たち」が、いろんな人と一緒に編んだブランケットでブースの天井を覆った

タロットの隣には、「粗野」さんによる「ない」服をつくろう!という”服の屋台”ブース。地域のおばあちゃんやおじいちゃんからいらなくなった服を譲ってもらい、それにいろんなパーツをくっつけて新しい服を作る。
古着をサッとリメイクしてその場で着て、街を歩いて楽しむ。唐突につながったレースや、実用性がなさそうな場所につけられたポケットにハッとする。
広い意味での「編集作業」の土台が、おじいちゃんおばあちゃんとの出会いであり、そこから人とモノとの新たな出会いに繋がっている。
ちなみに私もここでおばあちゃんが着ていそうな半そでシャツを購入。時間がなくてアレンジはしていないが、どんな服に合わせるか思案中である。

土台にする中途半端な服が道路のフェンスにつるされ、様々な素材パーツが並ぶ。ヘアピンやバッチなどの小物も作って会場で身につけている姿があった
ぬいぐるみのお友達に服を作って着せる。よく見ると民族的な凝った模様が入っている。お母さんも肩パットをアレンジした大作を身につけて帰ってくれた

本屋「SHEEPSHEEP BOOKS」としては、想定していたより売上が多かった。イベントの趣旨に合わせて芸術や街づくりに関する本を多めに持っていったが、多様なジャンルの本が買われていった。イベントでの出店という形ではあるものの、街の中の本屋について、改めて考えるきっかけになった。

イベントのコンセプトに合わせてアート・街づくりの本、リクエストのあった絵本、郷土本に加えてお店の定番を並べた
対話しながら、その人に合いそうな本をお勧めした

後半に、イベントに参加された竹安さん、木村さん、TPlat事務局の水田美世(なんだこれ?!サークルとっとりのマネージャーでもある)さんや、米子市内を拠点に、国内外からアーティストを招き「アーティスト・イン・レジデンス」の手法でシビックプライドの醸成を図ってきたAIR475の代表・来間直樹さんも交えて、アートと公共空間についてのトークセッションが行われた。
アートという言葉はもともと「技術」、特に手仕事による技を指す言葉で、それは生活の中にあるものだった。街の中に唐突にアート=芸術があるのではなく、生活の延長線上にあるアートなら、自分が住む街の人通りの少なさや空き家問題ともつながるし、単に歩く人や住む人を増やすこととは違う楽しみ方があるはず。アーティストや出店者に、そんな共通項を見出した。

トークセッションにて、アートを通じて米子の様々な公共空間を開いてきた実践経験を話すAIR475代表の来間さん
トークセッション後のアフタートークでは、木村さんが進行役となり来場者から集められたキーワードに沿って話を深めた
段ボールの切片に書き込まれたさまざまなキーワード

今回は実証実験とのことで、次回があるかどうかは分からないが、継続的に開催することで街がどう変化するのかを見てみたいと思った。
すべてのプロセスがストリート/公共空間で行われ、可視化されることに、意味があるはずだ。

会場には小さな子どもが利用できるスペースも設けられた

トークセッションの途中で、ちょっとヤンチャなバイクに乗った男の子が、何やってるんだろう?と気にする様子を見せながらも、爆音で通り過ぎていった。
もちろんその瞬間は、何も聞こえない。
開かれた空間であれば、普段は出会わないであろう人たちと、交わる可能性がある。
この日いちばんスリリングな瞬間だった。


駅前通り実証実験 YONAGO STREET WALK for everyday

実施期間|2026年3月1日(日)-29日(日) ※終了しました
実施エリア|米子駅前交差点-外堀通り交差点

[Art Day]
Produced by TPlat(一般社団法人鳥取クリエイティブプラットフォーム)
2026年3月22日(日)10:00-17:00
ライブペイント/竹安桜子
FROM/TO/木村佳奈
ハンドブックの表紙作りWS/なんだこれ?!サークル
「ない」服つくろう!服の屋台/粗野
タロットカードブース/目と根のプロジェクト実行委員会
BOOK STAND/SHEEPSHEEP BOOKS

実証実験の詳細は米子市ホームページをご参照ください。
https://www.city.yonago.lg.jp/47485.htm

主催|米子市 
問合せ|米子市都市創造課 0859-23-5353 toshisouzou@city.yonago.lg.jp

ライター

高木善祥

鳥取市出身。20年以上勤めた地元の書店を退職し、2024年5月に定有堂書店があったビルの2階に、SHEEPSHEEP BOOKSをオープンさせる。店が地域のハブになることを念頭に、自身もイベントを開催したり出店したり、さらにNPOに関わったりまちづくりに関わったりしている。趣味は音楽鑑賞で、ここ5年ほど韓国のインディーズをひたすら発掘し、半年に1度のペースでフリーペーパーを作っている。