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2018.7.14

幸田直人(いちまいのおさらオーナー)#2
あり合わせもので間に合う暮らし

できることをする。面倒なことはしない。幸田さんは折に触れてそう言う。これまでの経験の中で培った原則が楽しく持続可能な暮らしを実現させるようだ。


― 本気でなおかつ興味があれば家も作れるというお話でした。図面は引くのでしょうか?

引かないです。

― 建築基準法との兼ね合いはどう考えているのですか?

好きな場所に好きなものは建てることはできませんが、ここは都市計画区域外なので条件は緩和されています。鉄筋だったり特定の構造をしているならともかく、掘っ建て小屋や礎石のあるような建物なら特に許可がいらない場合もあります。

カフェのキッチンに立ち、昼食を準備する幸田さん

― 完成像に向けて作っていない?

家を作るのに材料はほとんど買わずに、集めている廃材や廃品で作ります。集めてくる廃材は規格が様々なので、「こんな家を作りたい」と思っても、ちょうど合う材が揃っていることなんてあり得ません。作りたいものがあって設計図を引いて材料を集めるのではなく、あるもの(材料)があって、作りたいもの、作れるものが決まるのです。

例えばキッチンを作る際、一応は目安の図面は作ります。しかし、実際の場所に立ってみると、「ここに火口を置いて、ここではお客さんを見ながら珈琲を入れようか…」という具体的なイメージが沸いてきます。
材料を1つ1つ現場にはめながら作っていくので、時間はかかるし、面倒なこともあります。
設計図と材料か揃っていれば完成に向けて作業していくだけですが、ない中で工夫し、現場と材料と対話しながら作られていく…。設計図で作る家にはないおもしろみに加えて、途中様々なアイデアや工夫が出るので、1つ1つに思い入れのある建物に仕上がります。
使い手と作り手で同じであるからこそ、現場で自分が納得いくまで作ることが可能で、また使いながら改造もできます。最近は、子供が大きくなるのに合わせてツリーハウスやブランコを作ったり、子供の部屋を増築したりしています。暮らしながら折々に作って行く感じです。

家は一生に一度の買い物だから、今どきは建てるとなると30年後でも住めるようなバリアフリーを考えると思うんですよ。老後のことを考えたら正しいかもしれない。でも、それは今の自分にとって幸せなんだろうか。暮らし方も仕事も今の自分の気持ちに正直な方がいい。
「今の自分にとって」と思うと、食べるものもエネルギーも出所がわかるものを選びたい。しかも、それが自分が身につけた技術の範囲でまかなえるとしたら、なおいい。

―エネルギーで言うと、電気はオフグリッドですか?

梅雨や冬の曇天もあるから自給率は8割くらいくらいです。割合を上げることもできるけれど、それだとバッテリーに負荷がかかって結局は資源とお金がかかる。そこは柔軟に考えて、必要な時は中国電力を利用しています。

ボイルし輪切りにした大根の表面に飾り膨張を入れていく

― そういう暮らしだと、現金が登場する場面は限定されてきますね。

自給自足の暮らしをしているといっても、家賃や税金、車は乗るし携帯だって使う。仕事に必要な消耗品もいろいろあるので、結構現金は必要になります。
いろいろなことをやっているので日々忙しいので、今やっている作業をもっと早く・楽に・安全に出来ないか…と常に考えていて、最近軽トラで運べる小型の中古トラクターを買いました。なるべく機械には頼りたくないとは思いますが、楽できるところは楽をしたい。そうすると空いた時間や体力でまた新しい別のことができます。
食べ物について言えば、あまり買いません。狩猟もするので、肉は罠で捉えたイノシシやシカを年間何頭かいただいています。

―狩猟の技術はどこで身につけたのですか?

鶏の絞め方は岩手に住んでいた時に教わり、イノシシやシカについては、近所で猟をしている人に教えてもらいました。教える人によって捌き方も色々です。まずは教えてもらった通りにやって技術を身につけますが、食べ方によって裁き方は異なるので、私は細切れや焼き肉ではなく、生ハムや燻製ハムのように塊を好むので、それにあったさばき方を、毎回試行錯誤しています。

海鮮とパプリカのスープと、根菜のグリル。大根、人参、菊芋、ジャガイモ、サツマイモなど

― 今の暮らし方をする上で参照した先人はいますか?

影響を受けた人はいますが、自分がしたい暮らしは自分にしか分からないので、いないですね。ただ、廃材建築、農業、イタリア料理、木工、自家発電、熟成肉、天然酵母パン、生き方、狩猟、溶接…と、いろいろな分野に師匠はいます。
ひるがえって、岩手の山村ではなぜ自給自足する暮らしが行われていたかと言うと、経済的に不利だという理由が大きいのだと思いました。お金がないから機械や肥料を使わず、あるもので生きる。だから昔の暮らしが残ったんだと思います。そういった技を持っている人たちは魅力的で格好いいですね。

トマトベースのパスタ。コースでは他にもパスタもう1種、サラダ、生ハム、バケット等々、味わえる

― 幸田さん自身はどういう農法をしているのでしょう。

基本無農薬で、田んぼは無肥料。畑には飼っている鶏糞や自分で焼いたもみがら燻炭やストーブから出る灰もいれています。不耕起ではありません。米の苗はできる限り自分で作り、無農薬なので除草は大変ですが、刈り取った後は天日干しです。要するにお金があまりかからないやり方です。田植機、刈り取り機、脱穀機は自前で揃えていて、自分で処理しているから、外注するものはなく、かかるのは人件費とガソリン代だけです。

二反の田んぼだから、そこそこの面積だけど収量は慣行農業に比べたらよくありません。通常なら一反で8から9俵は取れますが、うちはその半分くらいです。それでも家族で1年は食べられるし、多少誰かにあげられるくらいにはなります。販売農家ではないので、食べられるだけで十分なのです。
米作りの技術は子供達に伝えたいと思っていますが、無理に手伝わせることはしていません。まずは田植えや稲刈りの様子を見せています。それが自分たちの口に入る。年齢も幼いから部分しかわからなくても、それでいいと思っています。

5歳になる上のお子さんを抱っこする幸田さん

写真:水本俊也

《つづく》


 

幸田直人 / Naoto Kota
自給自足な循環型の暮らしを実践・提案する百姓。廃品・廃材などあるもので家を作ってきた。カフェ「いちまいのおさら」オーナー、ケータリング、自家発電の施工なども行い、暮らしが楽しくなるような技術を研究・提案している。

いちまいのおさら
東伯郡三朝町坂本
090-7997-3321
http://jizokutottori.dokkoisho.com
watashino.kurasi@gmail.com
※完全予約制。お問合せのうえお出掛けください。

ライター
尹雄大

尹雄大(ゆん・うんで)

1970年神戸生まれ。関西学院大学文学部卒。テレビ制作会社を経てライターに。政財界、アスリート、ミュージシャンなど1000人超に取材し、『AERA』『婦人公論』『Number』『新潮45』などで執筆。

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