末次一茂(めがねのスエツグplus 店主) #1
どこにもにもない店だから続けていける

米子の中心市街地、高島屋の裏路地にあるメガネ店「めがねのスエツグ plus」。欧米をはじめ世界中から集められた個性的なデザインのフレームを数多く取り扱うメガネのセレクトショップ。
店主でオプティシャン(眼鏡士)の末次一茂さんは、1977年生まれの米子生まれ、米子育ち。大学進学のため上京し、就職もしたが、2003年に戻ってきた。そして本業のかたわら、地元の商店を繋ぐイベントや音楽ライブの企画、フリーペーパーの発行など、いくつかのユニークなプロジェクトを仕掛けています。


― スッキリとしたお店。そして見たことがない個性的な眼鏡がたくさんありますね。

末次 ありがとうございます。アメリカ、ドイツ、ベルギー、デンマーク、そして日本から、品質はもちろんですけど、デザイン的にも自分がいいなと思うものを選んで扱ってます。東京や大阪でもなかなか見つからないものもけっこうあるので、わざわざ遠くから来てくださるお客さんもいらっしゃいますね。

― そしてよく見ると、メガネ以外の雑貨も。

末次 Tシャツだったり、CDだったり、カレンダーだったり、ポップアップショップ的にメガネとは関係ないものも期間限定で置いてたりします。メガネ屋という業種は結構静かというか動きが少ないんです。そもそも毎日買うような物ではないですし、基本的には用事がある人しか来ない。メガネに関心がない人でも気軽にお店に来てもらえるようにはどうすればいいか、そういうことは考えてますね。

― お店を始められて何年になりますか?

末次 この形態になってからは10年ほどですが、店自体は40年以上になります。そもそも家業が元町サンロードで時計店を営んでいて、ここは昭和49年に支店としてオープンしました。メガネ、時計、宝飾を扱う、いわゆる「町のメガネ屋」でした。

― 自身の代になってこういうスタイルのお店に方向転換した。

末次 そうですね。時代も変わって、業界的にも新しい形態のお店が増えていく中で、どういう店ならやっていけるかなと考えた結果こんな感じになりました。

― でもこういう、ある意味“尖った”お店を米子でやるっていくのは、なかなか難しいようにも思います。

末次 私はむしろ逆だと考えていて、つまりどこにもない店を作ればお客さんはどこからでも来てくれるなと。手前味噌になりますけど、少なくとも現時点では日本中探してもたぶんうちと同じような店というのはない。となれば、店の立地というのは、大きな問題ではなくなります。その意識を持っていないと、うちみたいな店は続けていくのが難しいと思ってます。もちろん、まだまだ模索してる部分もありますけど。

― お店を拠点にしてユニークな活動をされていますよね。近隣のお店を繫いでイベントを企画されたりとか。

末次 「米子茶散歩(以下、茶散歩)」ですね。茶散歩は6月の最初の週末に、参加店舗それぞれが無料で個別に選んだお茶を提供して、それをお客さんが巡るという2日間のイベントです。2014年から毎年やっていて、全体としてやってること自体はとてもシンプルなんですけど、実際マップを作るくらいしかやってないんですけど、各店舗がこれにあわせて独自の企画を開催したりもしています。これをきっかけに行ったことのないお店に足を運んでもらったり、町をゆっくり歩いてもらったりしてもらえればいいなと思ってます。

― 茶散歩を始めたきっかけは?

末次 東京の西荻窪で「STORE」というファッションブランドをされている國時(誠)さんという人がいて、モノだけじゃなく売り方も含めてコンセプチュアルなデザインをされるんですけど、彼が「西荻茶散歩 チャサンポー」というのをやっていると教えてくれて、これはいいなと。シンプルな提案の上で興味のある人が勝手に回るというのも面白いし、必要最小限のルールと必要最小限の仕事で運営する感じも魅力的。それで米子でもやらせてくださいとお願いしました。

― じゃあ暖簾分け的な感じ。

末次 そうですね。と言っても、西荻は100店舗くらいでやってて、米子は10店舗くらいなんで規模はぜんぜん違いますけど。
それでも実際にやってみると、これまで付き合いのなかった人とも出会えるし、他のお店のお客さんだった人がうちのお客さんになってくれる可能性も広がる。米子は商売人の町として栄えた歴史があって、今はどこも歯を食いしばって頑張ってる状況ですけど、それぞれが出来ることを考えてやっていけばまだまだいろんな伸び代は見つかるんじゃないかなと思います。

#2へ続く


末次一茂
1977年米子市生まれ。米子市中心部で眼鏡のセレクトショップを運営。東京での大学生活&ちょっとの眼鏡店修行を経て帰郷。国内外の品質とデザインが優れた眼鏡を「楽しんで選び、楽しんでかける」ことをあちこち飛び回りながらも布教中。同時に「せっかく箱を持っているので」と眼鏡と無関係な商材を販売したり、WS、トークイベントなどを企画。何事も「浅く広く」が心情。本人はほぼ毎日違う眼鏡をかけている。

めがねのスエツグplus
米子市角盤町1-27-14
0859-33-4544
営業時間:10:00-19:00
定休日:水曜日、および毎月第3日曜
http://suetsugu-taiyodo.jp/

ライター

岩淵拓郎

1973年兵庫県宝塚市生まれ/在住。雑誌編集者を経て、2002年から2010年まで美術家として活動。現在はフリーの編集者として、主に文化・芸術などに関する書籍やプロジェクト、イベントなどの企画と編集を手掛ける。編著に『内子座~地域が支える町の劇場の100年』(学芸出版社、2016)ほか。2001~2015年、京都造形芸術大学教員。2012~2014年、宝塚映画祭総合ディレクター。一般批評学会主宰。「トット」ではスタートアップのお手伝いを少々。趣味は料理(キリッ