レポート:鳥取県はーとふるアートギャラリー合同展「はーとをふるわせて4」

2024年秋に鳥取市中心市街地商店街で開催された「フクシ×アートWEEKs 2024」。その中で展開された展示のひとつが、鳥取県はーとふるアートギャラリー合同展「はーとをふるわせて4」。5つのアートギャラリーが集って開催された展示の様子をレポートする。


2024年10月19日から11月4日まで、鳥取市内の2つのギャラリーで「はーとをふるわせて4」が開催された。あいサポート・アートセンターが主催する本展は、障がいと共に生きるアーティストたちの作品をより多くの人に届けることを目的とした「鳥取県はーとふるアートギャラリー」の合同展である。「フクシ×アートWEEKs 2024」のテーマ「それぞれの色」に沿って、作家たちの個性や作風が際立つ作品が集った。

なお、「鳥取県はーとふるアートギャラリー」は障がいとともに生きるアーティストの作品を紹介する、県からの認定を受けたギャラリーのことである。現在、以下の5つの施設がこの認定を受けている。

ギャラリーからふる 運営:アートスペースからふる(鳥取市元町)
もみの木アートギャラリー 運営:もみの木福祉会(米子市富益町)
あかりアートギャラリー 運営:あかり広場(米子市皆生温泉)
ごっつええがなぁアートギャラリー 運営:十人十色(鳥取市用瀬町)
いろどり小径ギャラリー 運営:鹿野第二かちみ園(鳥取市鹿野町)

今回の展示はギャラリーからふると、ギャラリー鳥たちのいえという2会場で同時開催された。ふたつのギャラリーは徒歩ですぐに行き来ができ、鳥取市中心市街地商店街で展開される「フクシ×アートWEEKs 2024」ならではとも言える。同時に、ふたつのギャラリーを使う必要があるくらい、充実の作品群であることは鑑賞を進めるうちに気づいたことだ。筆者は、あいサポート・アートセンターのスタッフにお話を聞きながら鑑賞した。

個人的に心に残った作品を紹介したい。門脇悟さん(あかり広場)の作品は、「魚」という同タイトルの異なる二枚の絵である。それぞれ赤い鉛筆と黒い鉛筆で描かれた激しく力強い筆致、その迫力に目を奪われた。聞くと、そこには30匹ほどの魚が描かれているという。後天的に全盲となった門脇は、視覚のあった頃の記憶を頼りに制作しており、自分がもしも視覚を失った際にはどのような線を描くだろうと考えてしまった。なお、別の絵ではあるが、カニを描く際はより鋭い筆致になるというから面白い。

また、有里さん(アートスペースからふる)の作品「メッセージ」は、からふるや自分自身への前向きなメッセージを綴った無数のメモが、画面いっぱいにレイアウトされている。時折、枠からはみ出たメモが可愛らしく、単なる絵画ではないという密かな主張にも見える。
「ただのメモであれば普通は作品とみなされないかもしれないが、それを作品として出せることは、実は、施設の成果でもある」とスタッフは語る。確かに、障がいの有無に関係なく一人一人がアーティストでありながらも、周囲とともに作品制作をしているという側面は、障がいとともに生きるアーティストにとってはより大きな部分を占めるだろう。

展示を観るにつれ、施設ごとに作品の印象が異なることに気がついた。
聞いてみると、施設ごとに好まれる画材や得意とする画材があり、それが各施設の作品の特徴を形成しているようだ。施設での制作は、よく利用される画材をはじめ、周囲からの影響が大きいのだという。逆に、アートスペースからふるは個人個人で制作しているため、独立独歩の作家が多いといい、その意味でもやはりアーティストと施設は、作品制作の上で密接な関係にある。
鹿野第二かちみ園は、奈良県にある障がい者施設「たんぽぽの家」でアート制作を学んだそうだ。このような事例からも、アート活動を行う施設の研修が重要であることがわかる。


「はーとをふるわせて4」は、ふたつのギャラリースペースを横断して、アーティストそれぞれの個性が存分に発揮された展示であった。そして、それぞれのアーティストの面白さはもちろん、彼らと一緒に、日々作品制作や発表を行っている各施設の職員の姿を想像せずにはいられない展示でもあった。
今後も、こうした場が継続して開催されることで、「鳥取県はーとふるアートギャラリー」のことや、障がいとともに生きるアーティストの魅力が伝わることを期待したい。


※この記事は、あいサポート・アートセンターからの依頼を受けて制作したPR記事です。

ライター

野口明生

1985年鳥取県生まれ。場所や企画など作ったりやったりする人。鳥取県中部で活動する「現時点プロジェクト」メンバー。 過去に、とりいくぐる Guesthouse & Lounge、NAWATE、奉還町4丁目ラウンジ・カド、鳥取銀河鉄道祭など。