フクシ×アートフォーラム
黒澤浩美さんが語る「素晴らしきアートの世界」♯2
ヘラルボニーの取り組みは、世の中に知られていない作家たちを探す旅

「フクシ×アートWEEKs 2025」のプログラムのひとつ、2025年11月9日開催のフクシ×アートフォーラム「素晴らしきアートの世界」では、障がいのあるアーティストの魅力や可能性を探りました。レポート2回目では、黒澤浩美さん(株式会社ヘラルボニー最高芸術責任者、元・金沢21世紀美術館チーフキュレーター)と、鳥取県を拠点に活躍する官民学の3名が加わったパネルディスカッションの模様をお伝えします。


講演に続いては黒澤浩美さんと、石田陽介さん(鳥取大学 准教授)、三浦努さん(鳥取県立美術館 学芸課長)、妹尾恵依子さん(あいサポート・アートセンター センター長、アートスペースからふる 理事長)を交えパネルディスカッションを行いました。

妹尾さんは、ヘラルボニーとの関わりについて次のように振り返りました。

「からふるは、障がいがある人もない人も参加できるアート教室としてスタートし、現在は福祉事業所になりました。日々、作品はどんどんと生まれていますが、多くの人の場所まで届けるのを難しく感じていました。ヘラルボニーの存在意義はとても大きく、活躍がどんどん広がってほしいと期待しています」

そして、人の目に触れる場所に展示する作品を選び出す作業を、「遺跡の発掘作業に似ている」と表現しました。「福祉施設に伺って、普段は誰も足を踏み入れない倉庫で作品を見せていただくと、ものすごいと感じる表現に出会うことがあります。それまで眠っていたものが、一瞬で作品に変わります。その瞬間が障がいのある方のアートの可能性です」

「HERALBONY Art Prize」のほかにも審査員を務めているという黒澤さんは、作品を見出す作業についてこう語りました。

「人は自分が知っていることしか見えず、どんなに研鑽を積んでも、その範囲を超えることはできません。感性を総動員して見る中で、自分が知っている世界が拡張されていきます。しかし作家は、私が見えないものを作っているため、判断は難しい。

一方でヘラルボニーの取り組みは、世の中に知られていない作家たちを探す旅です。賞があることによって、隣の県や、近くの国にいる仲間を結びつけたいのです」


鳥取県障がい者芸術・文化作品展「あいサポート・アートとっとり展」美術部門の審査に関わっている三浦さんは、黒澤さんの発言に同意し、評価の難しさに言及しました。

「障がいのある人の作品と無い人の作品を見ることに境界はなく、心が動かされるかどうか。パワー、インパクト、丁寧さ、勢いなど、作品と対峙して向き合っていくしかありません。作品との出会いを重ねる中で、見る側の内面を刷新するような衝撃を与えるものに出会いたい、どんなものに出会えるのだろうという期待や可能性に満ちています」

石田さんは、「今は見えないけれど、次への展開への大きな可能性を暮らしの営みの中で作っていく。そのような表現の中に、滲み出る価値があるのではないでしょうか」と、宮沢賢治の民衆芸術の思想や、マルセル・デュシャンの「後世の人たちが観客だ」という言葉を紹介しました。

また福祉の世界では、障がいのある方のアートをパブリックに開き、大衆芸術化しようとする動きがあることについて話を展開。ヘラルボニーはアートの世界でその推進を促しているとわかり、腑に落ちたと語りました。

わたしたちもアーティストを支える一歩目を

鳥取県内では、アートに取り組む福祉施設や、始めようとする施設・当事者の中間支援を、あいサポート・アートセンターが担い、ワークショップやフォーラム、イベント、情報発信、人材育成などが行われています。その流れに対して、「福祉現場で生まれるアート作品が生活の中に入ってくる社会に向けて、いい方向に進んでいるなと思っています」と、妹尾さんは穏やかに語りました。

今回のフォーラムは、「フクシ×アートWEEKs 2025」のイベントのひとつです。福祉の場で生まれた、たくさんの作品が鳥取市中心部にある商店街のギャラリーやお店、ショーウィンドウに展示され、ワークショップも開催されました。

パネルディスカッションの締めくくりに、黒澤さんは聴衆へとメッセージを送りました。

「昨日、鳥取の商店街を歩いて作品に触れました。障がいのある作家たちは、多くの方との関わりの中で、作品を制作しています。世界的に活躍するアーティストを育てたのも、当事者を支える地域のさまざまな人たちです。

福祉に今まで関わりがなかった方も、一歩目を踏み出すことで、理解する機会が広がっていきます。“勇気はないけれど、のぞいてみようかな”、そのような気持ちから、まずは足をお運びいただければと願っています」

〈おわり〉


フクシ×アートフォーラム「素晴らしきアートの世界」

日時|2025年11月9日(日) 13:30ー15:00(開場13:00)
場所|わらべ館 いべんとほーる(鳥取市西町3丁目202)
入場料|無料

講演|黒澤浩美(株式会社ヘラルボニー最高芸術責任者/元・金沢21世紀美術館チーフキュレーター)
パネルディスカッション|黒澤浩美、石田陽介(鳥取大学准教授)、三浦努(鳥取県立美術館学芸課長)、妹尾恵依子(あいサポート・アートセンター センター長/アートスペースからふる 理事長)
MC|山下弥生(FM鳥取)

主催|
あいサポートアートセンター

お問合せ|
フクシ×アートWEEK実行委員会
鳥取市元町101(アートスペースからふる内)
TEL:0857-35-0191
E-mail:artspacecolorful@gmail.com

「フクシ×アートWEEKs 2025」ホームページ
https://www.fukushiartweek.com/

SNS:
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※この記事は、あいサポート・アートセンターからの依頼を受けて制作したPR記事です。

ライター

綵戸えりか

沖縄で生まれた詩誌「ぶーさーしっ」と、全国の仲間と作る詩誌「言葉をさがす旅 Sail」「言葉をさがす旅 Soil」に鳥取から参加しています。皆生で開かれた白井明大さんのワークショップが詩への入口でした。