舞踊公演「死者の書 再読」
2018年12月27日(木)-28日(金)開催
〈関連企画〉 読書会「踊子と、折口信夫「死者の書」を読んでみよう 11月25日(日)

鳥取在住のダンサー・木野彩子による、折口信夫の小説「死者の書」をもとに構成された舞踊作品「死者の書 再読」が、12月27日(木)、28日(金)に鳥取で上演されます。また11月25日(日)には、関連イベントとして読書会が行われます。本公演を前に、先日城崎アートセンターで試演会が行われました。ここではその試演のレビューと、鳥取公演についてご紹介します。


『死者の書』は、稀代の民俗芸能学者であり、詩人釈迢空としても活躍した折口信夫が、奈良の当麻寺に伝わる曼荼羅を織り上げた、中将姫の伝説をもとに書き上げた小説です。この物語を「再読」する舞踊公演が、トットのライターでもある舞踊家・木野彩子により鳥取で行われます。

上・下ともに、公演「死者の書 再読」試演会の様子(城崎アートセンター、2018年9月)写真:田中良子

公演「死者の書 再読」は、9月初めから城崎アートセンターにて、音楽家のやぶくみこ(ガムラン、パーカッション)、杵屋三七郎(江戸長唄)、照明家の三浦あさ子を迎えて滞在制作され、その成果として9月15日(土)、16日(日)に城崎アートセンターで試演会が行われました。「死者の書」の舞台は奈良時代、中将姫をモデルとした藤原南家の郎女(いらつめ)と、謀反の疑いをかけられ不遇のままに亡くなった滋賀津彦(しがつひこ)の魂が時を隔てて出会う、宗教的あるいは異色のラブストーリーともいえる物語です。公演では、一人のダンサー(木野彩子)がその両者を演じる、物語の中心軸を抽出したシンプルな構成となっています。舞踊に二人の音楽家の男女の声と音楽が重ねられることで、郎女と滋賀津彦の重層性が表現されています。また全体として暗い舞台の中に射し込む照明は、二人の精神がさまよう深さを感じさせます。

鳥取では12月27日(木)と28日(金)、とりぎん文化会館で本公演が行われ、試演ではみられなかった曼荼羅を描く演出も行われる予定です。郎女は滋賀津彦の魂に祈りをささげながら、曼荼羅を織り、描きます。その行為に舞踊をはじめとした「表現」の原点を探ることが、この作品を制作した動機の一つだと木野は語ります。木野の探求の核ともいえるシーンが、本公演ではついに舞台に現れます。時空を超えて祈り、希う世界を、ぜひ12月の鳥取でご覧ください。

また11月25日(日)には、鳥取県立図書館で、小説「死者の書」の読書会も開催します。「死者の書」は、そのタイトルからしておどろおどろしく、初めて読む人には難解な面もありますが、一度その雰囲気がつかめれば、軽やかなリズムをもった、豊かな古代奈良の世界が開けてくる魅力的な物語です。小説の中に様々に織り込まれた折口の民俗学の知識から、古代の人々がどのように自然と関わり、纏い、住まい、愛したのか、そしてそれらの営みの延長上にどのように信仰という行為を捉えていたのか、そのつながりを見ることができます。人々の日常の暮らしと宗教性は、近代社会が発展する中で両者の関係が見えづらくなっている私たちにとっても、重要なテーマではないでしょうか。舞踊による作品制作の過程で、木野が得たイメージや知見を手がかりとしながら、トットのライターnashinokiも加わり、みなさんと「死者の書」の世界を、探り考えます。時には声に出して読んでみましょう。原作を知れば、ダンス公演もより楽しむことができると思います。ぜひ併せてご参加ください。


【鳥取公演】
日時|2018年12月27日(木)19時半から、28日(金)15時から
会場|とりぎん文化会館小ホール(鳥取県鳥取市尚徳町101−5)
チケット|1500円(小学生以下無料)
チケット予約・問い合わせ|
とりぎん文化会館:tel. 0857-21-8700:web. http://site.torikenmin.jp/kenbun/
キノコチケット:kinokoticket@gmail.com
鳥取大学地域学部附属芸術文化センター:tel. 0857-31-5130
主催|鳥取大学地域学部附属芸術文化センター、キノコキカク

【関連企画:読書会「踊子と、折口信夫「死者の書」を読んでみよう」】
日時|2018年11月25日(日)14時から2時間ほど
会場|鳥取県立図書館(鳥取県鳥取市尚徳町101)
進行|nashinoki
朗読・解説|木野彩子
参加無料
予約・問い合わせ|
鳥取大学地域学部附属芸術文化センター:saiko@tottori-u.ac.jp(木野研究室)tel. 0857-31-5130

ライター

nashinoki

1983年、鳥取市河原町出身。鳥取、京都、水俣といった複数の土地を行き来しながら、他者や風景とのかかわりの中で、時にその表面の奥にのぞく哲学的なモチーフに惹かれ、言葉にすることで考えている。