アートと地域を結ぶ場に
「OOTANI HOUSE」
八頭町の旧大谷医院を現代アート施設として開館

鳥取県東部のまち八頭町の旧大谷医院が、現代アートを体感できる施設にリニューアルしました。2024年まで医院長を務め、現在はOOTANI HOUSE(大谷医院記念交流館)館長の大谷純さんが所蔵するアート作品が展示されています。同時に地域の人が集い、交流する場所ともなっています。


大谷純さんは1992年に父の伯さんより大谷医院を受け継ぎ、地域医療に力を注いできました。医院は2023年に休院後、今年の三月に大谷さんが所蔵する現代アートを鑑賞できるOOTANI HOUSEとしてよみがえりました。

看板を左手に進むとOOTANI HOUSEがあります

建物のリノベーションには、鳥取を拠点に活躍する彫刻家の藤原勇輝さんが関わり、手の込んだ設計のギャラリースペースが来館者を迎えてくれます。オープニングとなる現在の展示は、大谷さんと藤原さんがアイデアを出し合って選んだ色彩豊かな作品が中心となっています。

診察室へ向かう廊下で目を引くのは、「八頭こほり《一日の終わりに》」。子育てをする画家がアクリルで描いた絵の中央には、どこか悲しみを湛える雰囲気の女性が海風に吹かれながら佇んでいます。輝く色の重なりのなかに存在する心の揺れが迫ってきます。

胃カメラに使用していたという小部屋の扉を開けると真っ白な空間が広がり、正面に掲げられている、「会田誠《灰色の山》」のエスキースの一部分には、力なく積みあがるサラリーマンが描き込まれています。左右の壁に備え付けられた展示台には、木製のバッグに終戦を迎えたばかりのドイツの雪の日の写真を合わせた「三田村光土里《20世紀のかけら ​Fragments of the 20th Century》」より《1945 auf 1946 1946年の年明けに撮られたドイツの風景のファウンド・フォト》」と、青山悟による刺繡作品《Newspaper Clipping》が置かれています。時代をみつめる三人の作家のまなざしは、あたりまえと捉えて見逃してしまいそうな日常の機微へと目を向けさせてくれました。

つての手洗い場は「祈り部屋」へと姿を変え、小さな空間でひとり「藤浪理恵子《涙のパヴァーヌ~流れよ我が涙》」と対峙することができます。そして「藤原勇輝《MASS+GAME》」は、外へと通じる出口の近くに展示されています。扉の先の未知の世界と、朝鮮半島にインスピレーションを得ているという作品が呼応して、見る人のイメージを膨らませます。

「心の動きや情動に興味があるので、内面に迫る作品を中心に集めています。だから単に綺麗な風景の絵は、まったくコレクションしていないんです」と大谷さん。処置室だったスペースには「ミラン・トゥーツォヴィッチ《angel》」といったセルビアを代表する現代画家からの作品や、これから活躍が期待される若手作家の作品まで集められており、美しさを喚起して終わることなく、不安や恐ろしさ、ざらざらとした感覚さえもを呼び起こします。呉亜紗の《Unity》は、作家が出産後の一時期にだけ手にした作風で描かれたとのことです。ファンタジックな生き物やいくつか産み落とされていく卵が、心に余韻を残してゆきます。

以前はメスを収納していた透明なケースの棚には、「24 30」と表記された「LANDING BOX」が納められていました。箱の中には、芸術大学を同じ年に卒業した七人の作家の制作物が収まっています。その後の作家の歩みに心を寄せると、人の運命や使命、時間の厚みまでをも感じることができるかもしれません。

2026年5月現在、OOTANI HOUSEは予約制で公開されています。

今回の訪問では、大谷さんが作品を一つ一つ私たちと同じ目線に立って説明してくださいました。静かな心地の良い空間が広がるOOTANI HOUSEに込められた思いと、これからの展開、アートと福祉とのつながりについてのインタビューを、続いてのレポートでご覧ください。


OOTANI HOUSE
大谷ハウス
大谷医院記念交流館

館長|大谷純

所在地|鳥取県八頭郡八頭町宮谷221-5

利用方法|事前予約制、駐車場あり

お問合せ先|facebook

ライター

トット編集部

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