フクシ×アートフォーラム
黒澤浩美さんが語る「素晴らしきアートの世界」♯1
障がいの垣根を超えて―表現やプロダクトの素晴らしさを伝えたい
2025年11月9日、フクシ×アートフォーラム「素晴らしきアートの世界」が、わらべ館いべんとほーるで開かれました。黒澤浩美さん(株式会社ヘラルボニー最高芸術責任者、元・金沢21世紀美術館チーフキュレーター)を迎えた講演とパネルディスカッションを通して、障がいのあるアーティストの魅力や可能性について考えました。レポート1回目は、黒澤さんによる講演の様子をレポートします。
講演の冒頭で、「初めて鳥取を訪れました。金沢と地続きの空を感じます」と語りかけた黒澤さん。聴衆との心の距離がぐっと縮まったように感じました。
黒澤さんが現在携わっているのが「株式会社ヘラルボニー」の活動です。ヘラルボニーは「異彩を、放て。」を合言葉に、一人ひとりが輝く存在であること、そしてそれを社会に届けることをミッションとする企業です。
2024年6月時点で、鳥取を含め全国52施設、241名の障がいのある作家と契約し、企業とマッチングしています。そこで生まれた対価を、作家へと還元する取り組みを進めています。またヘラルボニーのECサイトでは、ハンカチ・ネクタイ・洋服などの多彩なプロダクトを見ることができます。
立ち上げから8年が経過し、契約する作家の数も参画する企業も大幅に増加。創業地の岩手県盛岡市と東京に拠点を置きそれぞれの地で、ショップ・カフェ・小さなギャラリーを構えています。
盛岡市内では、バスや電車のラッピングに、ヘラルボニーと契約した作家の作品が使われています。「誰の作品か、どんな作品かわからなくても、誰かの記憶に残ってほしい。障がいがある、ないといった垣根を超えて、表現行為やプロダクトが素晴らしいことが伝わっていけば」と黒澤さん。小学生が「ヘラルボニーのバスだ」と、声に出してくれることも増えてきたといいます。

障がいのある方のアートを社会へと「見える化」する
ヘラルボニーの活動は国内にとどまらず、パリに支社を構え、今後はヨーロッパ、アメリカ、アジアへの展開も見据えるほどに成長しています。
講演で名前の上がったアーティストの一人が、浅野春香さんです。20キロの米袋をキャンパスにポスカによる点描画を制作。タイトルの「ヒョウカ」には、ずっと一人で描き続けてきた作家の、評価されたいという気持ちが込められているといいます。
「ヒョウカ」は、ヘラルボニーが主催し、黒澤さんらが審査員を務める「HERALBONY Art Prize」で、2024年にグランプリを受賞しました。このアートプライズは、作家と企業をマッチングし、企業が作家の表現をどのように展開するか考えてもらう契機となっています。2025年は、70か国から約3000点の応募があり、年々参加する作家が増加しています。
大手企業の関心も高く、ラリーカーのラッピングや、航空機内で使用するカップ、店舗の壁画などに作家のIP(知的財産)が活用されています。私たちも生活の中で目にする機会も増えてきました。企業と共創する道が開けると、次のプロジェクトで声をかけてもらうことにもつながっていきます。
企業側からは「作家を知りたい」との声が聞かれ、福祉施設の見学のツアーを行うこともあるとのことです。黒澤さんは、「それまで接点がなかった方にも、障がいのある作家がどういう考えを持って制作に向き合っているのかお伝えしています。社会に変化が起こっていると感じます」と話しました。

黒澤さんのヘラルボニーでの活動は、前職である金沢21世紀美術館の学芸員としての仕事と地続きであり、その経験に裏打ちされています。
「街に血を巡らせることのできるような、人とミュージアムが双方向性に関わり合う場所を目指しました」。黒澤さんがそう語る金沢21世紀美術館は、特徴的な丸い建物を持つ公園のような美術館です。出入口が4か所あり、段差もなく外と内が通じています。大きなガラス張りの空間は、外と美術館内の動きをお互いにわかるように設計されており、視線の透過が重要な要素となっています。
ダイバーシティやケア、文化的処方を考え、黒澤さんは美術館事業を展開しました。「参加し、考え、価値を転換する機会を提供する場として、ミュージアムはアップデートされつつあります。展覧会の機能に加え、宗教・ジェンダー・人種・社会階層・移民など属性にかかわらず参加してもらうことによって、その役割を更新したいと考えました」
所蔵作品には、鑑賞者が色のガラスの中を歩くことで、新たな色が作られる「スイミング・プール」、水が張られている下の空間で居合わせた人がコミュニケーションをとれる「カラー・アクティヴィティ・ハウス」などがあります。それらの写真が、次々にスクリーンに映し出されると、微笑みを浮かべる聴衆の姿も見られました。
そして黒澤さんの貫き続けている信念が、耳を傾ける人の心に浸透していくように感じました。「作家がどう世の中で評価されているかよりも、表現がどれほどの真価を持ち、人々の共感を呼べるかをキュレーターとして大切にしてきました。現在も、作家の属性にかかわらず、作品を社会へと見える化するお手伝いをしています」
〈♯2へ〉
フクシ×アートフォーラム「素晴らしきアートの世界」
日時|2025年11月9日(日) 13:30ー15:00(開場13:00)
場所|わらべ館 いべんとほーる(鳥取市西町3丁目202)
入場料|無料
講演|黒澤浩美(株式会社ヘラルボニー最高芸術責任者/元・金沢21世紀美術館チーフキュレーター)
パネルディスカッション|黒澤浩美、石田陽介(鳥取大学准教授)、三浦努(鳥取県立美術館学芸課長)、妹尾恵依子(あいサポート・アートセンター センター長/アートスペースからふる 理事長)
MC|山下弥生(FM鳥取)
主催|
あいサポートアートセンター
お問合せ|
フクシ×アートWEEK実行委員会
鳥取市元町101(アートスペースからふる内)
TEL:0857-35-0191
E-mail:artspacecolorful@gmail.com
「フクシ×アートWEEKs 2025」ホームページ
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※この記事は、あいサポート・アートセンターからの依頼を受けて制作したPR記事です。