谷口翔夢さん、中村幸暉さん、永田俊世さん(劇団あしあと)第10回全国学生演劇祭出場
鳥取大学の演劇サークル「劇団あしあと」が、3月7日から10日まで大阪で開催される第10回全国学生演劇祭へ出場します。大会直前、メンバーの谷口翔夢さん、中村幸暉さん、永田俊世さんの3名に、これまでの道のりと作品作りへの想いをお聞きしました。「わたし|ワンダーWONDER」でも関連インタビューを掲載しています。
部活ではなくサークル
―みなさん、大学入学前は演劇経験があったんですか?
永田:僕は全く経験がありません。サークルの新歓で先輩にご飯をごちそうしてもらって、そのまま入ってしまった感じです。
谷口:僕は高校演劇をやっていました。その流れで大学でも続けようと思って、「あしあと」に出会いました。
中村:僕は小中高ずっと野球をしていましたね。大学では何か新しいことをやってみたかったんです。新歓で「劇団あしあと」の雰囲気が良かったので興味を持ちました。
―演劇経験の有無はサークル内ではどうですか。
谷口:半々くらいですね。ただ、高校以前に演劇で大会に出る経験があった人はほとんどいませんね。
―サークルのメンバーは40人ほどいるそうですが、演劇への取り組み方はどうですか?演劇部ではないわけですが。
谷口:部活ではなくサークルなので、すごくやりたい人もいれば「自分のペースで楽しめたらいい」という人もいます。僕らが入った当初はとてものんびりした雰囲気でした。でもなぜか僕たちの代は「全国を目指そう」という空気になっていったんです。
―そのきっかけは何だったのですか。
谷口:もともと演劇をもっと本気でやりたいという思いは個人的にはありました。そんな折、中四国演劇祭の方からサークル宛に「出てみませんか」とDMが来たんですよ。それを知った僕が「これは面白そうだからやってみよう」とみんなに声をかけました。
「全国の舞台にはそのバカさに騙されない大人が必ずいるから」
永田:実は僕、前回の全国学生演劇祭をたまたま見に行っていて。「すごい世界だな、出られたらいいな」と思いつつも、「まあ無理だろう」とも思っていたんです。でも、そのDMが来たとき「一応グループLINEに流してみよう」と投稿したら、それを見た谷口くんが、火がついたように「やりたい!やりたい!もう俺がやるわ!」って。締め切りまで3日くらいしかなかったんですが、彼が申し込んだところから一気に話が動き始めました。
―申し込んだのが昨年6月とのことですが、そのあと作品作りはどう進めたのでしょう。
永田:9月の大会まで時間がなかったので、まず何をやるか手探りでしたね。
谷口:僕自身、台本を書いたこともなかったので、最初は4、5人の仲間に「1週間以内に1000字書いて出して」と投げてみたんです。でも、どれも決定打に欠ける。その後も夜中までグループ通話しながら「深夜テンション」で盛り上がったアイデアも翌朝には微妙だったりして、本格的に作品が固まらないまま8月に入ってしまったんです。そこから「もう自分で書くしかない」と決めて、結局一気に書き上げました。それが今回上演する『だから、今走る』です。
―そして臨んだのが9月16日の中四国大会。結果はいかがでしたか。
谷口:出場4チームのうち、うちが1位で通過できたんです。正直、「なんで勝ったんだろう」って自分たちでも驚く感覚があって。審査員の方々も意外だったんじゃないかと思います。
永田:他の団体さんは割と硬派な世界観で攻めていたんです。それに対して、僕らは舞台上でひたすら遊んでいるようなお芝居をやったので、その対比が大きかったかも。
―その遊び心が評価されたわけですね。全国へ進むうえで、残り2週間(取材当時)を切りましたが、どのようなブラッシュアップを意識しているのでしょう。
谷口:審査員から「幼稚でバカみたいなところが逆にいい」と評していただきました。その上で、「全国の舞台にはそのバカさに騙されない大人が必ずいるから、そういう人の意見を受け止めて成長してほしい」と送り出されたんですよ。なので、そこをしっかり踏まえつつ、自分たちの持ち味の「バカみたいな魅力」をさらに強調しようと考えています。
「僕もその列車に乗りたい!」
―今回の脚本には、どういった想いが詰まっていますか。
谷口:役者それぞれの特徴を活かしたキャラを作りたいと思っていて、誰にどんな役が合うかを考えながら書きました。それが結果的に「バカみたいに見えるけれど、何やら楽しそう」という舞台になったんだと思います。
中村:バカな要素というのは、ほとんど僕の役のキャラクターなんですけども(笑)。でも、変なことをやっていても、観客にとってどこか愛おしくて憎めない感じを出したいなと思っていて、そこは注意しています。
永田:芸大のように本格的に演劇を学んでいるわけではないので、そういう意味では質は劣る部分があるのかもしれません。でも、「何も知らないからこそ出せる熱量」には自信がありますね。熱量だけは、自分たちが一番あるような気がします。
―全国大会本番まで、あとわずかです。今の心境はいかがですか。
谷口:怖いという気持ちは正直あります。でも、もうここまできたらやるしかないし、3月7日の本番は「3月7日の自分たち」をただ見せるだけですからね。
永田:1年前、観客として見た全国学生演劇祭にまさか出場できるとは思っていなかったので、すごくワクワクしています。このふたり(谷口と中村)がものすごい熱量で突っ走ってくれるので、僕は「僕もその列車に乗りたい!」ってつい後ろにしがみついて、巻き込まれる形でついてきた感じですね。一度きりのチャンスなので、このタイミングで思いっきりぶつかってみようと思います。
中村:僕は「出るからには勝ちたい」という気持ちが強いです。中四国大会でも「どうせやるなら1位を狙おう」と言っていました。全国はさらに強豪が集まりますが、これまで作り上げてきたものをぶつけて確かめたいですね。
〈終わり〉
「劇団あしあと」インタビューはこちらのサイトでも掲載しています
わたし|ワンダーWONDER 全国大会に行く演劇サークルって、どんな感じ?――全国学生演劇祭出場「劇団あしあと」インタビュー
第10回全国学生演劇祭
会場:扇町ミュージアムキューブ CUBE01(大阪)
日程:2025年3月7日(金)〜10日(月)
「劇団あしあと」ホームページ
https://tottori-asiato.sakura.ne.jp/