アーティストのリサーチがつくるオルタナティヴな「知」の可能性を探るトークイベント「知るのつくりかた」
昨今のアーティストの作品制作において、重要な役割を果たす「リサーチ」。未だ可視化されない事象に光を当て認識やかたちへと導き、また細分化し分断された各分野における知識や技術をつなぎ新しい価値を立ち上げる、このアーティストたちのしなやかな態度と知の技法について考えます。
このプログラムがはじまったきっかけは、アーティスト・イン・レジデンス(※)などでアーティストたちが作品制作をする際に行う「リサーチ」の過程が、アカデミックなそれとは全く異なる「知の体系」を作り上げているのではないか、という点に気づいたこと。未知のものに対しオープンマインドで関わるしなやかな態度、またリサーチの結果、光をあてたり、発掘したりしたものを組み合わせて編集するやり方は、作品からはなかなか見えて来ませんが、実に示唆に富んでいます。
今年5月に実施した第1回のプログラムでは、アート、社会学、臨床哲学といった、異なる分野で新しい知の生産の現場に携わる方々をゲストに迎え、それぞれが取り組んでいる課題と知を構築するための実践についてのプレゼンテーションと、参加者を交えたオープンマイク形式のトークセッションを実施し、協働から価値を創造していく方法を探りました。
2回目となる今回は、よりアート/アーティストのリサーチに焦点を当て、作品制作や活動にどのような役割を果たしているか、またそうした動向を巡る状況と可能性について考えます。
プログラムでは、オランダのハーグ王立芸術アカデミーにてマスターアーティスティックリサーチを修めた本プロジェクトのディレクターであるmamoru氏と、同じく同コースを修了し、リサーチを取り入れた制作を手がけるHyunTae Lee氏を韓国より招き、それぞれのリサーチへのアプローチを具体例を交えて紹介いただきます。また、札幌のS-AIRから橘匡子氏を迎え、レジデンシーにおけるリサーチ、そして昨今のアーティストと学際的な知との交流について、アートと科学のプロジェクトを企画する非営利団体アーツ・カタリスト(イギリス・ロンドン)の活動を中心にイギリスやヨーロッパにおける動向についてお話いただきます。最後に3人のプレゼンテーションを踏まえたフリートークで意見交換を行います。
レジデンス・プログラムに関わっていらっしゃる方、そしてアートやアート以外でも、広く世界に興味のある方々の参加をお待ちしています。
(※)アーティスト・イン・レジデンス … 各種の芸術制作を行う人物を一定期間ある土地に招聘し、その土地に滞在しながらの作品制作を行わせる事業のこと。
School in Progress 2017 パブリック・トーク「知るのつくりかた#02」
日 時|2017年10月9日(月祝)13:00-17:00
13:00-13:20 趣旨説明、スピーカー紹介
13:20-15:00 ゲストによる実践・活動紹介
15:00-15:20 休憩(コーヒーブレイク)
15:20-17:00 ゲストによる実践・活動紹介、フリートーク
閉会
会 場|旧横田医院(鳥取市栄町403)
参加費|500円(お茶お菓子代)
定 員|20名
問合せ|ホスピテイル・プロジェクト実行委員会事務局
TEL 090-9546-9894(担当:赤井あずみ)
E-mail hospitale.project@gmail.com
WEB http://hospitale-tottori.org/
《スピーカープロフィール》
mamoru(サウンドアーティスト、School in Progress 共同ディレクター)
1977年大阪生まれ。2016年ハーグ王立芸術アカデミー/王立音楽院(オランダ)アーティスティック・リサーチ修了。様々なリサーチ手法と想像力によって過去、現在、未来/架空の音風景を書き起こし、「あり得た(る)歴史」などを題材にした作品を制作。また身近な物や行為から生まれる微かな音をとりあげた「日常のための練習曲」など、「聴くこと」から世界を知る方法を探求。レクチャー・パフォーマンス、映像、テキスト、サウンド作品を国内外の美術館・ギャラリーで発表。2014年より「旅するリサーチ・ラボラトリー」(共同企画監修、下道基行)、鳥取での「スクール・イン・プログレス」(共同企画監修、山本高之)などのプロジェクトのディレクションも行う。
HyunTae Lee(アーティスト)
1981年韓国生まれ。2016年ハーグ王立芸術アカデミー/王立音楽院(オランダ)アーティスティック・リサーチ修了。HynTaeはアーティスティックリサーチの実践者であり、旅/探索の終焉へと導いてくれる手段としてリサーチに取り組んでいる。韓国にてコミュニケーションデザインを学んだ後、オーストラリアにて建設現場の作業員として働き、多種多様な建設の現場経験を持ちながら、オランダでもリサーチを通じて旅/探索を続ける。
橘匡子(NPO法人S-AIRプログラム・ディレクター)
ロンドン芸術大学LCP校出版学科卒業、同大学院カンバウェル・カレッジ・オブ・アート校ブック・アート修士課程修了。2010年よりNPO法人S-AIRに所属、主にレジデンスプログラム、展覧会やトーク等のパブリックイベント企画、アーティストのリサーチや撮影等のコーディネートを行う。2016年9月より、文化庁新進芸術家海外研修制度として連携先でもある、アートと科学のプロジェクトを企画する非営利団体アーツ・カタリスト(イギリス・ロンドン)にて1年間の研修を行う。