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2019.4.6

山下残さん(振付家・演出家)#3
政治と芸術のマニフェスト

鳥取市のアートプロジェクト「HOSPITALE」の招聘作家として2018年に同市で滞在制作を行い、マレーシアの国政選挙についてのパフォーマンス作品「GE14(the 14th General Election)」を制作・発表した山下残さん(1)
山下さんの友人で国会議員になったファミー・ファジールさんはアーティスト(演出家)でもあります。一方で、政治と文化芸術、表現の世界は、その本質や目的から一般に水と油のような関係のイメージを持つこともあるかと思います。最終回は、具体的な政治と芸術の関係について、また鳥取で発表した作品を発展させる次回作について伺いました。


― パフォーマンス作品の中で紹介された映像や写真記録からは、聴衆の熱狂や、政党間の激しい対立が伝わってきて、とても印象的でした。ファミーさんが「アートフェス以上にアートフェス」と言い表すような温度感のあるマレーシアの選挙だったから作品にできるわけで、逆に日本の政治だと作品にしづらいでしょうか? 日本にいても芸術と政治が近いとか、両者を一緒に考えたことがない人も多いと思います。山下さんはその後帰国されて、芸術と日本の政治の関連を感じておられますか。

実際、意味や見方を変えると私の呼ばれたこの滞在制作プログラムもやっぱり、政治的と考えられるところがあります。「地域を元気にする、鳥取にもっと人を集めたい、活性化するために芸術を使っている」ということもできるわけです。そういうことって大小いろいろあるじゃないですか。
逆に、芸術が政治をモチーフにすることがもっとあってもいいんじゃないかと思ったりします。両者のつながりはすごく見えにくいとも思います。でも実は、よく知ると裏で政治が働いている。鳥取に来て、いろんな方のお話を聞いたりして実例を知って、意外に近いんだなというのは気づきましたね。

旧横田医院で開かれたパフォーマンスの様子。滞在中にパフォーマンスは4回実施された。写真:田中良子

― 具体的にはどういったシーンでそのつながりを感じますか。

例えば、文化政策の事業で、その成り立ちなどの話を聞いても政治と密接につながっているんだなと感じます。あとは、アーティストの方が個人的な思惑で政治的な作品を作ったときに、いろいろクレームが入ったりだとか、そういう経験を聞かせてもらうことも多々ある。意外と監視されているんだなと思いました。
HOSPITALEに関しても、オルタナティブな自由な場所に感じるけれども、実はすごく、行政とつながっている感じがします。このウェブサイトもそういった部分はないですか?

― tottoは、今は全くの民間団体の運営ではありますが、成り立ちの背景には確かに行政の動きに影響を受けています。残さんとしては、両者のつながりはあまり良しとしないお考えですか。

まああんまりよくはないですよね。一般的な通念として、戦争に芸術が利用されて人々を煽動したというような、そういう歴史は世界中でありますし、やっぱり人の気持ちとかを盛り上げて、操作しやすい部分がある。アートとかの力は、政治に使われたときに間違いが起こるということは、基本的にあるものなので、そこは、あまり、近寄らせないほうがいいっていうのはあると思います。
とはいえ、軍事とか経済とかではない、文化の力というのが十分日本のためになるっていうのがわかっていますから、そのために事業をして芸術活動をして、サポートしてもらうっていうのは当然のことだと思います。それがサポートしてもらうことを目的として事業を立ち上げるような話になってくると、あまりよろしくないような気がします。

写真:田中良子

― 今回残さんは、選挙を主題に作品を作っておられます。振り返ってみて、鑑賞者の中には作品のライブ感に共鳴した人もいる印象がありました。残さんの言われる一般的な通念を踏まえて、今回の作品の中の盛り上がりは、選挙の街頭演説での熱狂とはまた違ったものなのでしょうか。

作品は煽動するというよりも、ただ自分の好きなリズムで作っているだけなので、違ったものかもしれませんね。どうかな、見てる人には同じであってもいいんですけど。
演説も在る種、与党にも野党にもそれぞれ決まったテンプレートがあるんです。マレーシアにおいては、こういう話口調でこういう話題から入って、だんだんエキサイトしていくっていうような。もしかしたら、演説のテンプレートを分析して、こうなっていますよってレクチャーしてみせるパフォーマンスもありかもわからない。
でも、決して「こういう風に見ろ」とは言わないけれど、今は、自分の好きな演説のリズムを作りたいなと思っていますね。
一方、政治演説で主張するマニフェストの中身は、票を取るためのものですからね。票の多い人が勝つわけですよ。芸術というのは、人気を得るためのものではなくて、あくまで自分がこういう音楽をつくりたいというか、こういうことがやりたい、大事だと思ったら、もう全部票を失ってでもやるんです。それが政治におけるマニフェストと、芸術におけるマニフェストの違いだと思います。

国際舞台芸術ミーティング in 横浜(TPAM)でのパフォーマンスの様子(2019年2月) 写真:前澤秀登

― 鳥取での滞在制作が終わり、これから作品はどう変化していくのでしょうか?

2月に横浜で国際舞台芸術イベント「TPAM(ティーパム)」が開催され、ファミー・ファジール本人を呼んで、路上で街頭演説を開こうと思っています。TPAM は20 年以上続いているイベントで、いろんな海外のアーティストやゲストが集まり、作品やミーティングを通じて交流します。
横浜では、演説そのものがパフォーマンスになるように、ゲスト弁士も呼んで、野外ステージをデザインします。
4月は東京の駒場アゴラ劇場で。劇場の中にテントステージを作ります。3部構成で、1部は鳥取で公開した映像とかを見せながらマレーシアの選挙を紹介するっていう形で、2部はファミーファジール本人の演説。3部は、それこそ選挙を踏まえて二人で何か特別なものを披露したいです。その後もこの作品を披露する場があればいいなと思っています。

《おわり》

1: HOSPITALE2018レジデンス・プログラム招聘作家・山下残 http://hospitale-tottori.org/program/performance_zan_ge14/


山下 残 / Zan Yanashita
1970年大阪府生まれ。代表作に、100ページの本を配り観客がページをめくりながら本と舞台を交互に見る「そこに書いてある」、スクリーンに映写される(すう・はく)の呼吸の記号と俳句から引用されたテキストを身体とあわせて見る「せきをしてもひとり」、本物の線路の上で断片から成る世界の事象をつぶやく「大行進」、捨てられたゴミを用いて繰り広げるコミュニケーションのネットワーク「庭みたいなもの」、インターネットレッスンを通じてバリ舞踊を習う「悪霊への道」、伝承の現場を疑似ドキュメントする「左京区民族舞踊」、ブラックボックス空間へのオマージュ「無限館の水は二度流せ詰まらぬ」など。
http://www.zanyamashita.com/

国際舞台芸術ミーティング in 横浜(TPAM)
GE14 ファーミ・ファジール + 山下残
2019年2月16日(土)、17日(日)
https://www.tpam.or.jp/program/2019/?program=ge14

こまばアゴラ劇場
ファーミ・ファジール&山下残 GE14 マレーシア選挙
2019年4月26日(金)-29日(月・祝)
http://www.komaba-agora.com/play/7967
※なお、こまばアゴラ劇場での公演を無料にするためのクラウドファンディングが2019年4月22日(月)午後11:00まで行われています。目標金額は750,000円。ご協力をお願いします。
https://readyfor.jp/projects/GE14

ライター
大下加奈恵

大下加奈恵

生え抜きのとりとり人。20歳を過ぎて鳥取を何も知らなかったことを知る。媒体ごとの情報の加工のされ方や距離感に興味を持ち、実験的に友人たちとネット動画配信の生番組やフリーペーパーの制作、微弱電波を使ったミニFMのラジオ放送をする。大学卒業後もことめや(鳥取市瓦町)を拠点にたまにラジオを使って遊ぶ。

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