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2019.3.27

山下残さん(振付家・演出家)#2
違うことと同じこと。同じことの中の一つ一つの緊張

鳥取市のアートプロジェクト「HOSPITALE」の招聘作家として2018年、同市で滞在制作(8月10日-9月23日)を行い、マレーシアの国政選挙についてのパフォーマンス作品「GE14(the 14th General Election)」を制作・発表した山下残さん(1)
マレーシアで山下さんは、友人、ファミー・ファジールさんの選挙運動に同行し、その様子を映像や写真に記録しました。それらを素材に、鳥取では、政治学や社会学の専門家、選挙に関連した活動をしている鳥取の人と計9回の対話の場(オープンディスカッション)を持ち、作品発表につなげました。インタビュー2回目は、鳥取での創作過程で重要な要素となっていった実際の選挙演説について、そして、パフォーマンスの上演について伺いました。


― 鳥取でのオープンディスカッションでは、途中の回から実際の演説を読まれるようになっています。これはどうしてですか。

トークには多彩なゲストが来てくださったのですが、一方の私は、毎回マレーシアの選挙のことを初めてお会いする人に紹介するわけです。毎回同じ説明をすれば楽ですけど、でも「HOSPITALE」プロジェクトのスタッフたちは毎回いるんですよね。だから、彼女たちにとっても毎回新鮮な方がいいじゃないですか。それを模索する中で、何回目かのオープンディスカッションの際に、ファミーが実際に選挙で行った演説を翻訳して朗読してみました。紹介のスタイルをいろいろ試してみるのが毎回楽しめて新鮮でした。なおかつ、マレーシアの政治を分かりやすく説明するには、演説なんじゃないかと。そうするとスタッフから「今日の演説はよかった」だとか「ちょっと今日のは長かった」だとかいろいろ感想が聞けて、演説は同じセリフでも毎回違うんだなあと思いましたね。徐々に、選挙の中の演説っておもしろいなって気付きました。

オープンディスカッション05「山下残×福住英行(日本共産党鳥取県常任委員)」の様子 写真:田中良子

― 説明するようなトークだけじゃなく、演説の発表の場にもなっていった。

そうですね。言葉としては同じ演説であっても、ちょっと激しくやってみるとか、ニュアンスを変えるだけで違う演説になりますよね。あるいは、その前後の文脈、紹介する脈絡によっても。こういう解説をしてから読むとか、前振りなくいきなり読むとか、そういう順序とかもあります。演説にまつわる全体の構成を考えていくというのが、自分の中ではしっくりしてきたんですよね。

― パフォーマンスは、終盤で友人のファミーさんの演説を残さんが朗読されるシーンがまるで残さんの言葉のようでもあり、印象的でした。

朗読は、ファミーの言葉を翻訳して削ったりはしましたが、内容そのものはほぼ変えていません。棒読みすると「ファミー・ファジール」でしかありえなかったりするわけですが、僕自身の気持ちを込めて歌い上げるように朗読しました。
やっぱり自分は音楽が好きだから、一つの音楽になるようにしたかったですね。
作品も、具体的な音符があるのではなくて、自分の声も含めて、流れの中で盛り上がったり静かになったりというような移り変わりを考えました。具体的な音量の盛り上がりもありますが、順番にファミーの演説とかマハティール(野党代表)の演説とか、日本の鳩山元首相の演説といったテキストの「配置」や、それこそ、鳥取大学の学生の宮北温夫君が描いてくれたパフォーマンス空間の壁の絵も含めて、全ての「配置」が音楽なんですけども、別にそこに音楽はなかったとしても、一つの、感覚的なつながりが出てくればいいと思いました。

オープンディスカッション06「山下残×中森圭二郎(映画監督)」の様子 写真:田中良子

― オープンディスカッションでも感じておられていた通り、演説は毎回が「なまもの」だと思うんですけど、全4回のパフォーマンスの上演を通して変化したことや、発見されたこととかはありますか。

結構ね、「毎回違うんですか」とか、変化のことを聞かれるんですけども、実は、舞台やパフォーマンスをつくる人にとって、いかに毎回、同じであるかということが大事だったりします。違いは当然出てくるけれども、何を目指しているかというと、全てが一定のパフォーマンスを見せることだったりします。クウォリティーを保つのが一番難しく、チャレンジングです。ほっといたら変わっていくんですよね。
変わらないようにしようということは、いいことも、悪いこともあります。悪いことは、発見を見逃してしまうことです。「今日は違ってた、あかんあかんちゃんと(変わらないように)やろう」みたいなことをやっていると、アクシデントだとか失敗とかを排除してしまいます。やっぱり発見っていうのは、間違ったり失敗したり、うまくいかなかったことじゃないかなと思うんですよね。だから、オープンディスカッションの期間は、毎回違うプレゼンをやって、いっぱい発見がありました。
パフォーマンスの期間は、2日連続のあと3日空いて2日連続で、作品に手を加えるには中途半端だったかなと思いますね。そういう意味で、全4回のパフォーマンスはすごくシンプルなプレゼンになりました。

パフォーマンスをする部屋でマレーシアの選挙フラッグをかざす残さん

― それでも回を重ねるに従って変わっていってしまったなと思うことはありますか。

当然、毎回見に来てくださる方はさまざまで、かけがえのないものにしたいと思いますし、緊張するし、絶対失敗してはいけないと思います。やっぱり昨日よりいいものにしようと思います。
でも、ちょっとした間やスピード、佇まいといった些細なことでガラッと変わることがあります。お客さんとして舞台をみていても、役者さんのちょっとした手の動きに感動することもあるし、逆に自分自身の作品で「ちょっと今日はこういう風にしてみよう」と意識的に動きを変えて、本番にガラッと変わって大失敗したことがありました。
そういう細かいニュアンスの積み重ねを一つ一つ緊張しながらやってるんですよね。映像を変えるタイミングなど演出も全て手動なので、タイミングをちょっと早めたり、じらしてみたり、そういうことは試みています。そういうことが積み重なって、昨日やったことよりも今日やったことの方がよかったと思えるようにしたいから、全く「ライブ」ですよね。

《つづく》

1: HOSPITALE2018レジデンス・プログラム招聘作家・山下残 http://hospitale-tottori.org/program/performance_zan_ge14/


山下 残 / Zan Yanashita
1970年大阪府生まれ。代表作に、100ページの本を配り観客がページをめくりながら本と舞台を交互に見る「そこに書いてある」、スクリーンに映写される(すう・はく)の呼吸の記号と俳句から引用されたテキストを身体とあわせて見る「せきをしてもひとり」、本物の線路の上で断片から成る世界の事象をつぶやく「大行進」、捨てられたゴミを用いて繰り広げるコミュニケーションのネットワーク「庭みたいなもの」、インターネットレッスンを通じてバリ舞踊を習う「悪霊への道」、伝承の現場を疑似ドキュメントする「左京区民族舞踊」、ブラックボックス空間へのオマージュ「無限館の水は二度流せ詰まらぬ」など。
http://www.zanyamashita.com/

国際舞台芸術ミーティング in 横浜(TPAM)
GE14 ファーミ・ファジール + 山下残
2019年2月16日(土)、17日(日)
https://www.tpam.or.jp/program/2019/?program=ge14

こまばアゴラ劇場
 ファーミ・ファジール&山下残 GE14 マレーシア選挙
2019年4月26日(金)-29日(月・祝)
http://www.komaba-agora.com/play/7967
※なお、こまばアゴラ劇場での公演を無料にするためのクラウドファンディングが2019年4月22日(月)午後11:00まで行われています。目標金額は750,000円。ご協力をお願いします。
https://readyfor.jp/projects/GE14

ライター
大下加奈恵

大下加奈恵

生え抜きのとりとり人。20歳を過ぎて鳥取を何も知らなかったことを知る。媒体ごとの情報の加工のされ方や距離感に興味を持ち、実験的に友人たちとネット動画配信の生番組やフリーペーパーの制作、微弱電波を使ったミニFMのラジオ放送をする。大学卒業後もことめや(鳥取市瓦町)を拠点にたまにラジオを使って遊ぶ。

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