門限ズ(クロスジャンルバンド)#2
基本は美しい舞台になる、と思ってる

音楽、演劇、ダンス、アートマネージメント。4人のメンバーがそれぞれにプロとして活躍するフィールドを持ちつつ活動する門限ズは、現在、11月に開催する公演『ゲキジョウ実験!‼︎「銀河鉄道の夜→」』の制作真っ最中です。「越境」を通底するテーマとして持ってきたという門限ズと鳥取の人々が掛け合うことで、どのような公演になっていくのか、あるいはしていきたいのかをそれぞれに語っていただきました。


― 越境する、垣根を越えていくっていうのは、言うのは容易いけれど、実際はすごく難しいのではないかと思います。無意識下で日常と化している垣根は、きっとたくさん存在しますよね。
門限ズさんは、4人がそれぞれでアイディアを出して活動をされているわけですが、もともとそれぞれが「垣根を越えていく」ことを面白いと思っていたのか、それとも野村さんがそういうのをやろうと誘っていくうちにのってきたのでしょうか。

野村誠(以下、ノム):うーん、やっぱりちょっとね、3人とも違う人ですよね。自分とはね。基本。ジャンルも違うし。だから、そういう意味で言うと、普段から同業でやっていれば、そこまで交換しても驚きはないかもしれない。しかも頻繁には合わないですから。しばらく合わなかったりして、改めて最近こういうことをやってるんだって交換すると、なるほどと刺激を受ける。でもそういうところで、共通する部分も、ときどき見えたり。その辺は面白いです。どうですか。


野村誠:作曲家・ピアニスト。ブリティッシュ・カウンシル招聘により英ヨーク大学大学院音楽研究科にて1年間研修。インドネシアと日本で何度も上演される度に変化するガムラン作品「踊れ!ベートーヴェン」、日英共同の「ホエールトーン・オペラ」、マルチメディア作品「老人ホーム・REMIX」、インスタレーション「根楽」、「アコーディオン協奏曲」など、20カ国以上、40都道府県以上で、分野を横断し人と環境と出会いながら、作曲プロジェクトを展開している。

吉野さつき(以下、めい):せーので手探りで始めた時は、やっぱり緊張しましたし、今でも…

倉品淳子(以下、じょほんこ):ぎくしゃくしてますよ(笑)

― そんな風には見えないですけれど…(笑)

じょほんこ:やっぱり、友達っていうのとも違うし。緊張感はありますね。

ノム:ちょっと違う言語をしゃべる人たちという感覚はあるので、だから、そこで、言語をすり合わせようとする作業が面白くて。難しいことでもあるんですが、でもでも、面白いことの方が圧倒的に多い。

めい:共通言語としては、そこそこは、世代が近くて、それぞれの仕事の中でも関わっているところがあって、一緒に過ごした時間とか経験の中で、だんだんと共通する言葉みたいなものが増えてきた。どうしても4人全員が集まれなくても、ある程度のことを決められるようになり、このぐらいならおそらく共通する考えだろうみたいなところは、お互いに察してきて。
私たちを取り巻いている芸術分野の動きとか社会の変化に対して、どういう目線からどういう意見を持っているかとか、そういう部分に、近いものや重なるものはあるんだなって、最近感じるところですね。

― 鳥取銀河鉄道祭については、なるべくいろんな人が関わって、削ぎ落としていくんじゃない作り方を目指したいと度々おっしゃっておられますね。

めい:さっきエンちゃんが言ってたこと(#1参照)に繋がるんですが、芸術作品を作るときに、緻密に作り込んだり無駄なものをそぎ落として、完成度を上げていくみたいな、作り方が一方である。でも、門限ズではそっち方向ではなく、職人さんの作る動きの中に説得力があるようなものを、どんどん発見して、発掘して、大事に表現のなかに取り込んでいくという作り方もあるだろうと私は考えていて。
アートの手法がいったんエスタブリッシュメントされて固まってきてしまったときに、もう一回それを崩しながら、ただ壊すんではなくて、そこに力を与えて、ほぐしてさらに深めたり新しい方向性を見出したりすることに繋がるんじゃないかって、私は思っています。表現の分野にとどまらず、社会の在り方と繋がるものだと思っているんです。
多様性って最近は薄っぺらい言葉になってきているような気がして、単純にぱっと使いたくないけれど、そういうことを考えるにも、門限ズが今やっているようなことは意味があることじゃないかなと。これは私の自分の立ち位置からの考えかな。


吉野さつき:ワークショップコーディネーター・愛知大学文学部教授。英国シティ大学大学院でアーツ・マネジメントを学ぶ。公共ホール勤務、英国での研修(文化庁派遣芸術家在外研修員)後、コーディネーターとして、教育、福祉などの現場でアーティストによるワークショップを数多く企画。アウトリーチ事業やコミュニティアーツプログラム、ワークショップ等の企画運営を担う人材育成にも各地で携わる。

― 多様性という言葉、いろんなところで耳にするようになりました。良いなと思う反面、違和感のある使われ方もされているように感じます。

めい:多様性を大事にすることは必要なことだし否定はしないんだけど、すごくそれは難しい。いろんなチャレンジが必要だし、自分の中の固まっている価値観と異なることも受け止めたうえでどうするかを考えることだから。極端に言えば、多様性は嫌いだって言っている人たちの意見もいったん受け止めるってことになる。これは本当に難しいですよね。

ノム:理念とか思想だけで言うと、だいたいは排除しない方がいいって思うよね。でも実際に作品とか何か物を作ろうとか思った時、整えて美しく見せるとか、整理して聴こえるようにするためには、排除した方が早い。「あの人は音外れてるから歌わない方がいい」「あの人は来てもらわない方がいい」「この人もいなくていい」って。でもそれをどんどんやっていくと、僕もいない方がいいとか、あいつもいない方がいい、皆いなくなってしまえとか、そういう方向に行っちゃうわけです。理念としては排除しない方がいいって簡単に言えるんですけど、その、実際排除しないで、どういう風に芸術を作っていくかを考えると、意外に簡単じゃないんですよね。

めい:簡単じゃない、だから、簡単に言いたくないってこと。でもそれに、難しいながらもやろうとするこのメンバーには、何かみんな共通するものがあって、それが一緒にやれる魅力だなって、思っていますね。

― 鳥取で一般の方と作品を作るとなった時に、舞台にすぐに立ちますよと言える人は多くはないと思うんですね。向いている人だけがやるんじゃなくて、いろんな人が、できることをできる範囲で楽しんでやれることを探していく作業になるのかなと思うんです。

ノム:他の地域に比べたら、鳥取は芸術活動をされている人、少なからずいると思うんです。人口比に対しては多いと感じます。でもやっぱり、数としては多くないというのは確か。それで、もう一つ確かに言えることは、自分がやっていることが芸術活動だという自覚はないけれど、非常に、ある種芸術的で、ある種宮沢賢治的と言えるかもしれない人は、潜在的に必ずいっぱいいるわけです。
11月の公演の見本になっているのは、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」というものなんだけれども、ある意味鳥取の人々が主役になる公演になります。すでにいまワークショップを重ねているんですが、集まってくる人たちが非常に多様なんです。みんながある一つのメソッドに統一されるようなことではなく、それぞれの人が、それぞれのやり方でやっているけれども共存しているっていう舞台作品になると思います。

― 11月の公演について、まだ決まっていないこと、公開できないことたくさんあると思いますが、どういう作品にしていきたいか、それぞれに考えておられるイメージを教えてください。

めい:今ワークショップには、国籍が日本ではない人、身体やそれ以外で、いわゆる障害があるというふうに言われる人、高齢の人、幼児連れの人とか参加してくださっている。そういういろんな人たちがそこに立ち現れていて、なおかつ、その人たちが持っているそれぞれの魅力みたいなものが、星のように、キラキラしてて、それがいろんな星座になって、お客さんも私たちも一緒に旅していくような、何かそういう作品になったらいいなって、思います。
88トピック(1)ですでにピックアップされている人とか場所とかも、やっぱりそういう星空を一緒に色どっていく星だなと思います。加えて、出演している人だけの星の星座ではなくて、さらに取り巻くいろいろな、鳥取のまちの場所だったり人だったりするそういうものも含めて広い夜空という感じになっていく公演でありお祭りであり、場でありというものになるはずです。

じょほんこ:私たちが先日行ったワークショップの時に、子供を抱えて参加しているお母さんがいたんですよ(2)。即興でいろんな動きをしていたときに、そのお母さんは子どもはやりたくないって言ってるのにガンガンジャンプしたりしてて。子どもが腰にぶら下がってたりね。後でその時の写真を見た時に、子供も一緒に舞台に立てないかなって思ったんだよね。
例えば、タイタニックのシーンとかで、このお母さんと子どもがいてくれたら、すごく良いだろうなと思って。


倉品淳子:俳優・演出家。劇団山の手事情社所属。1990年より俳優として劇団山の手事情社にて舞台表現を追求する傍ら、インプロや大道芸、「あなざ事情団」「門限ズ」などのユニットに参加し、観客参加型演劇、他分野アーティストとの作品作りなど、演劇の可能性を広げる活動も同時に行ってきた。スイス、ドイツ、ポーランド、ルーマニア、韓国など海外での公演も多数。2012年より認定NPO法人ニコちゃんの会「すっごい演劇アートプロジェクト」チーフプロデューサー。

めい:赤ちゃんが、ふーって泣いたときに、何か急に、リアルな感じがしたよね。

じょほんこ:子連れの人たちがたくさん出てくれるか分からないけど、子供が途中で泣いたり「おかあさーん」て呼んでもいいから、参加してほしいなって妄想してて。参加者一人一人と会うたんびに、いろんな妄想が広がるんですよ。どんどんそういう出会いを増やしていけたら、美しい舞台になるんじゃないかなって思ってます。

ノム:メインは鳥取の人たちなので、出会っていく中で、僕らが想定していることとは全然違うことが起こる可能性は十分にあるんです。要するに、この公演は、僕らがやりたいこととか、僕らが思い描いた筋書きに合わせてくださいというやり方ではなくて、僕らと宮沢賢治というのもがあるところに鳥取の人たちが参加して、僕らがどう対応できるかというところに掛かっている。宮沢賢治はすごく対応力があるので、それはダメですこれはできませんって、排除することにはならないと思うんです。そうすると、参加する人たちによって、思わぬ展開も起こり得る。本番が11月って決まっているから、その都度タイムリミットは出てくるんですが、その間に「そう来たか!」みたいに、いい意味で頭を悩ますことが、起こってほしいなと。鳥取の人が、もっとこうしたいとか言ってくれたり、こんな人や、こんなネットワークがあるって教えてくれたりしたら、じゃあこういうやり方もあるかもって、変更を余儀なくされる。そういう風になるとやっぱり何度も鳥取に来て鳥取の人たちと関わりながら作る意味があるなって、思います。

めい:ワークショップをして、関わっていく出演者の方々はもちろんですが、88トピックですでにピックアップされている人とか場所とかも、銀河鉄道祭の中で一つ一つの星とみていくような、大きなプロジェクトです。そういう大きな枠組みの中で、私たちも柔軟にそのことに対応しながら作品づくりしていけたらいいよねと思うし、私たちが気づくことがあればもちろん取り入れたい。だけど、やっぱりずっと鳥取にいる人たちから、あ、ここ面白いよとか、こういう風にしたらどうだろうとか聞かせてくれたりするタイミングをたくさん持ちたいですね。

― 鳥取に住んでいる人たちから、こういうことやりたいんだっていうことが出てきた方が面白くなるということですね。

じょほんこ:こないだのワークショップでね、参加者の方に「リンゴ」を表現してもらったんです。ある青年はね、いきなり前回りでゴロゴロ向かって来て「リンゴです!」とか言って(笑)すごい面白かったんですよね。門限ズは自分の既成概念を壊される方が好きな人たちなので(笑)ワークショップでは銀河鉄道夜の物語とは関係なしに即興で体を動かしていたんですけど、リンゴって実は原作にも出てくるんですよね。だから本番でもさ、人がリンゴとかになってセリフとか言い出したらいいだろうなとか思っちゃうわけですよ(笑)いろんなパターンの妄想を膨らませてるわけです。リンゴはリンゴじゃなくて、いいんだなと思うんですよ。

遠田誠(以下、エンちゃん):これ、記事にしたときに意味が通じますかね、横で聞いてて伝わんないのに(笑)

じょほんこ:大丈夫大丈夫。

― 突拍子もないアイディアというのも、どんどん取り入れたいということですよね。

じょほんこ:ほら、ね、伝わってる(笑)

エンちゃん:僕はね、会場となるとりぎん文化会館の形状に、これからつくっていくパフォーマンスをうまく落とし込んでいきたいと思ってる。ああ、このパフォーマンスをするためにこの会場はこういう形で建てられているんだと言わしめるくらいにね。米子市の児童文化センターで森山さんが解説してくれたプラネタリウムの投影機はさ、造形としてもすごく美しいんだけど、投影するっていう必然性を持ってあの形になったわけでしょ。それと同じ様に、とりぎん文化会館の形がね、なぜ中庭があるのか、なぜホワイエが吹き抜けで1階と2階があって階段が繋がっているのかが説明できるくらいにね、このパフォーマンスのためにこうなっていたんだって説得できるくらいの。そういうものにしたいですね。


遠田誠:ダンサー・振付家。漆器作りの家系に生まれ、プロダクトデザインを学ぶ一方、商店街ファンとして街のディティールに注目。デザインする上での俯瞰した視点とマニアックな街の断片、ダンスの外様としての特異なアプローチから作品づくりを行う。日常のはざ間にダンスその他諸々を割り込ませた『まことクラヴ』を主宰し、劇場はもとより国立新美術館、金沢21世紀美術館、山口情報芸術センター(YCAM)といったアートスペースから商店街、市役所、電車内、空港に至るまで出没し、サイトスペシフィックな活動を展開する。

ノム:基本は、美しい舞台になる、と思ってる。まずね。で、ちょっとおかしな舞台にもなると思う。そして、その美しさというのは、「どうやこれ美しいだろう!」という美しさではなくて、ちょっと目を向けなかったら、見過ごしてしまうような美しさ。出ている人たちは知っている人たちだったりするかもしれないけど、でもそこには、知らない美しさがある。そういう美しさの舞台を、その日公演を見に来て、体験したら、次の日からの日々が変わってしまうような舞台になると思う。
公演はいわば銀河鉄道の旅です。そして私たちは戻ってくるわけですよ。戻ってきた後には日常に帰っていくわけです。お客さんも、ワークショップに参加した人も、僕たち門限ズも。その誰にとっても、その日常っていうのが、銀河鉄道の旅に出る前とは違って見えるっているものを作ろうと思っています。
何ともないと感じていた日常や、見知った場所、見知った人も、こんないいところあるんだなと気づくような。言い切るのはなかなかなので、そうなりたいということです。

― 鳥取に暮らす人間として、そんな舞台を目指していただいているなんて、すごく嬉しいですね。

ノム:そうしたいんです(笑)そうするために、皆であーでもないこーでもないとやっているんです。言うは簡単なんだけど、やるは意外と大変なので(笑)

《おわり》

1:鳥取県総合芸術文化祭・とりアート2019のメイン事業〈鳥取銀河鉄道祭〉の一環として、県内様々な地域での活動や人々の暮らしを星座に見立てた88のトピックスで紹介している。「すべての人が芸術家である」という宮沢賢治の思想に基づいている。
2:演劇・音楽・ダンスのジャンルを横断したワークショップを数多く行いながら、参加者の人たちとともに、11月の公演”ゲキジョウ実験!!!「銀河鉄道の夜→」” を作り上げている。


門限ズ / Mongenzu
作曲家でピアニストの野村誠、ダンサーで振付家の遠田誠、俳優で演出家の倉品淳子、アーツマネージャーで大学教員の吉野さつきの4人が、お互いのジャンルを超えてアートの可能性を真剣に考えながら遊んでいるバンド。2008年結成。2009年1月門仲天井ホールで初ライブ。同年7月には英国でのワークショップとライブなどによるツアーを行う。2010年福岡市博物館、福岡市美術館でのワークショップ、福岡アジア美術館でのライブ。2016年愛知県豊橋市でワークショップや遠足などを実施。2018年九州大学ソーシャルアートラボに招聘されワークショップなどを実施。
鳥取銀河鉄道祭では、2019年11月開催のとりぎん文化会館公演『ゲキジョウ実験!‼︎「銀河鉄道の夜→」』を鳥取県内の人たちとともに制作中。

鳥取銀河鉄道祭
〈鳥取銀河鉄道祭〉は鳥取県総合芸術文化祭・とりアート2019のメイン事業です。宮沢賢治の名作「銀河鉄道の夜」を題材にした音楽劇を県内全域で展開しています。また「すべての人が芸術家である」という賢治の思想に基づき、県内様々な地域での活動や人々の暮らしを星座に見立てた88のトピックスで紹介していきます。これらは終着点である2019年11月2日3日にとりぎん文化会館で開催される鳥取公演 “ゲキジョウ実験!!!「銀河鉄道の夜→」”へと繋がっていきます。
公式HP https://scrapbox.io/gingatetsudou-tottori/
Facebook https://www.facebook.com/Gingatetsudou.Tottori/

ライター
水田美世

水田美世

千葉県我孫子市生まれ、鳥取県米子市育ち。東京の出版社勤務を経て2008年から8年間川口市立アートギャラリー・アトリア(埼玉県)の学芸員として勤務。主な担当企画展は〈建畠覚造展〉(2012年)、〈フィールド・リフレクション〉(2014年)など。在職中は、聞こえない人と聞こえる人、見えない人と見える人との作品鑑賞にも力を入れた。出産を機に家族を伴い帰郷。2016年夏から、子どもや子どもに目を向ける人たちのためのスペース「ちいさいおうち」を自宅となりに開く。