トリムジカ・プレイリスト #5
大谷 瑠(音楽好きの大学生)

例えば、夏の浦富海岸を車で走らせながらカーステから流れる◯◯◯◯とか、冬の大山スキー場で凍えた手をカイロで温めながらイヤホンで聴く◯◯◯◯とか……。ここにしかない時間と風景の中でこそ聴きたくなる音楽があります。毎回、鳥取屈指の音楽好きたちが登場し、鳥取のさまざまなシチュエーションにぴったりな音楽をセレクト、珠玉のプレイリストをお届けします。名付けてトリムジカ・プレイリスト。
久しぶりの今回は、いま関東で大学生活を送る、音楽好きの大谷瑠さんが選曲しました。鳥取で過ごした高校生時代に聞いていたCDから、眠たくなる晩秋にぴったりの10曲です。


今月のプレイリスト:h y p n o t I c

CDショップも軽音部も無い。おまけにお金も無ければ、音楽の話の合う友達もいない…。そんな高校生時代、毎月、毎週、必死で仕入れた中古CDをまるでプレゼントでももらったかのように一枚一枚繰り返し、大切に聞いていたのを思い出します。なるべく当時聞いていたものから選曲しました。睡眠の秋、ということで終盤になるにつれて眠くなります。出かけても何もない鳥取で過ごす秋は眠ってばかりいました。

1. My Little Town / Simon & Garfunkel
この曲は息苦しい故郷への決別と郷愁がないまぜになった微妙な感情をうまく表している。自分も生まれた田舎を呪い、逃げるように都会に住み着いた人間の一人です。日々、そんな街の影を振り切るように地下鉄に飛び乗ります。

2. Orphans / cero
「逃避行」という言葉に人は弱い。スリルをロマンと勘違いするから?いや、「逃げる」という行為にはもっと根源的な何かがある気がする。小学生の頃、鬼ごっこは人一倍得意でした。かくれんぼするとおしっこ行きたくなるのは私だけでしょうか。

3. Time Machine / D.A.N
夜が似合うメロウな一曲。シティ色が強いが、時として白夜と見紛うほどの漁火を横目に、ドライブするときなどにどうだろうか。車で、あてもなく、文字通りイカのように「回遊」するのも良いかもしれない。

4. Blown a Wish / My Bloody Valentine
個人的に大好きな「シューゲイザー」という音楽のジャンルの一曲。このジャンルはヘッドフォンかスピーカーで爆音で聴いて頂きたい。何かが決壊したかのようにとめどなく溢れる音の洪水は、音楽なのに色彩を感じられるようです。

5. 海辺の町へ / never young beach
線路と海が異様なほど近い山陰本線。ついうとうとしていると、夕陽で染め上げられた日本海にハッと目を覚まされることがあります。汽車通学だった頃、日課の様に下校中トランプで一円玉を賭けて暇つぶししていたら、負けの込んだ中原君が500円玉をもってきて「これで絶対負けんし」と言い放ったのはあまりに有名。

6. Luna / The Smashing Pumpkins
90年代グランジの名曲。思春期に聞いた方も多いのではと思います。秋空のような不安定な年頃に寄り添ってくれたのはいつも青臭い音楽でした。Pixiesと同様、ボーカルがイケてないのも魅力の一つ。ここからだんだん眠くなってきます。

7. Autumn / Airhead
ギターのアルペジオが、街路樹の多い倉吉の木枯らし、はたまた大きくうねる鈍色の日本海のような寒々しさを彷彿させます。自転車で片道1時間かかる海へ釣りにいったものの、中原君が「海にいくと潜水艦がきてさらわれる」という話を真に受けて早々に引き上げたのはあまりに有名。

8. 記憶 / paniyolo
毎日をほんの少しだけ幸せにできる魔法の一曲。イヤフォンをすると、何気ない日常がたちまち映画のワンシーンと化す「アンビエント」です。タイトル通り、日々に押し込められ深く沈潜した、大切な、誰かのささやきを思い出しそうになります。

 9. Damaged  / Primal Scream
陽気なハウスミュージックの名盤「Screamadelica」より。一曲だけ、アルバムの持つ熱を冷ますかのように収録されています。よろめくばかりの男の哀愁たっぷりです。「秋」の「心」と書いて「愁」。昔の人の感性も鋭敏だなぁと感心します。

10. One of Those Summer Days / Rhye
おやすみなさい…。

写真:よしもちきみこ


大谷 瑠(音楽好きの大学生)
鳥取県出身の大学生。’18年、関東へ進出。とあるカフェのチラシでtottoの存在を知り、ホームページへアクセスするもエラーで閲覧できず。「エラーで開けない」という問い合わせを機に、話が弾み執筆をすることになる。帰宅部時代に街ブラを繰り返したことで鳥取の地理に詳しい。興味関心は映画、音楽、アウトドアを中心に多岐にわたる。

ライター

トット編集部

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