春のキャンプ
「尹雄大のちょうどよく自分とつながるための準備体操」
感じたことを最後まで言葉にして

2026年3月14日と15日に、湯梨浜町のゲストハウス「たみ」で、春のキャンプ「尹雄大のちょうどよく自分とつながるための準備体操」が開かれました。全国から参加者が集まり、インタビュアーで作家の尹雄大さんの話に耳を傾け、自分自身を見つめました。二日間のキャンプの模様をレポートします。

春のキャンプの前に、尹さんからの宿題がメールで届きました。それは自分の長所と短所、好き嫌いを考えておくというものです。宿題への答えをメモしたノートとペンを携えて、まだ寒さの残る三月の週末、春のキャンプへと向かいました。

ひたむきななまなざしの先をたどるように

 <一日目>
 イントロダクション「自分の“中の人”の声を聞いてみる」
 料理ワークショップ「自分の感覚を観察する」
 グループワーク「価値観と信念を見つける」

年齢も働き方も多様な十二名が、たみのリビングに集いました。イントロダクション「自分の“中の人”の声を聞いてみる」では、キャンプに参加すると決めた理由を、一人一人が話しました。それぞれの動機は違いますが、「ちょうどよく自分とつながる」ことへと向き合おうとする希望を感じる時間でした。

そのあとに、力を抜いて感じたままを最後まで言いきるといった、自分の気持ちを話すための心構えについて尹さんは説明し、時おり問いを投げかけました。話し始めた相手に対して、とてもまっすぐに尹さんのまなざしが向かっていることに驚かされました。射抜くような強さの視線を送るのとも、漫然と眺めているのとも違うのです。相手のありのままを見つめるかのごとく伸びていく視線に、話す人の言葉は受け止められていました。

昼食は、料理ワークショップで自分の感覚を観察しながら作る、きんぴらごぼうと豚の生姜焼きです。準備されたレシピ通りに、分担を決めて調理を進めます。ご飯とともに出来上がった料理を食べながら、調理中の感覚を話し合いました。

普段の感覚と比べてにんじんの量が少なかった、同じレシピに沿って作っても人によって豚の焼色に差がある、レシピで指示されている工程がなぜ必要なのかわからなかったなど、二枚のレシピを前にして、自分や周りの方の感覚や価値観へと開かれていきました。細かく書き込まれたレシピには、料理研究家の性格や不安が表れているかもしれないと展開していく話は、興味深いものでした。

午後は三名ずつの四グループに分かれて、「価値観と信念を見つける」ためのワークを行いました。宿題で考えてきた「自分の長所と短所、好き嫌い」をグループのメンバーに話し、ちょうどよく自分とつながっている状態を見つけていきます。

わたしとつながっていられるよう、自らの感覚に考えをめぐらしながら語り、同時にグループのメンバーがその人自身とつながるよう耳を澄まし、応答します。対話の仕方にもそれぞれに個性があり、語られた話を受け止めて一人ずつにキャッチフレーズを付けたというグループもありました。

聞くことと話すこと、考えることでとても忙しい時間でしたが、グループで交わす言葉を通して、自分の感覚に呼応するものを、自らが見つけていく過程をくぐり抜けたと感じています。

一日目の締めくくりに、相手の話を聞き応答する際に大切なこととして、尹さんは福祉施設で勤務する経験などをもとに、ユーモアを取り上げました。人と接する機会の多い仕事をする参加者も多く、異なる背景から導かれる対話が積み重なって、現場で生きる哲学へと昇華していくようでした。

身体的に自立する。内的な勢いを止めることなく

 <二日目>
 オープンプログラム「公開インタビューセッション」
 身体ワークショップ「姿勢から自立を考える」
 振り返り

「公開インタビューセッション」はオープンプログラムとして行われ、20名ほどが集いました。たみの蛇谷りえさんが、事前に参加者から届いた「自分との付き合い方、自分を理解するってどういうこと?」などのモヤモヤを紹介し、尹さんが答えていきます。

何名かの方は、尹さんとの公開インタビューセッションに臨みました。何気ない日常のモヤモヤについて、尹さんがじっくりと受け止め、さまざまな角度から問いを返すことで、参加者の声のトーンや表情、応答するまでの間が移り変わり、話が深化していく感覚が伝わってきました。

そして、すっと差し出される蛇谷さんの応答は軽快で、ときにユーモアに溢れています。尹さんと蛇谷さん、参加者が「自分とちょうどよくつながる」を志向しているからこそ生まれたのだろうリズムが響いていました。

たみでの昼食を、思い思いに過ごしながら食べたあとは、「姿勢から自立を考える」をテーマにした身体ワークショップに移りました。心地良く自分でいることのみに注意をむけて、自らの足で立ってみます。すると日本の学校教育で身につけた正しいとされる姿勢は、実は不安定であること、そしてきちんとした仕草で応答しようと考えた途端に身体はいきいきと動かなくなることを実感しました。

休憩を挟んで、キャンプを振り返り、今感じていることや考えていることを共有する時間を持ちました。尹さんがご自身の考え方の変遷について語るとき、変化のきっかけとなる出来事には必ず他者が関わっているように感じました。

今回のキャンプにおいても大きな助けとなったのが、耳を傾け言葉を返してくれる、たみでともに過ごしたみなさんの存在でした。ちょうどよく自分とつながることは、周囲の方の力を借りながら、新たな世界へと少しずつ開かれていくことなのかもしれません。

二日目は雨が上がり、プログラムの合間に東郷湖のほとりを歩くと、さざなみに太陽がゆるやかに反射していました。このキャンプで困難や不安な気持ちへのはっきりとした回答や、解決するための魔法を誰もが見つけたわけではないように思います。わたしたちはこれからも、あいまいな気持ちを持ちながら、それに目を背けることも否定することもなく、自分の感覚に寄り添い言葉にしていくのでしょう。

“ここで気づいたことを人生にどう取り入れ、どのように歩んだのか、再度分かち合える場があるといい” 振り返りの場を囲む方たちと奏でた言葉を、何度も思い返しています。


春のキャンプ「尹雄大のちょうどよく自分とつながるための準備体操」

[両日参加]
日 時|2026年3月14日(土)ー15日(日)
場 所|たみ(鳥取県東伯郡湯梨浜町中興寺340-1)
受講料|学生12,000円 一般15,000円(宿泊費込み)
定 員|10名程度
※自宅から現地までの交通費、期間中の食費はご負担願います。

[単発参加]
オープンプログラム「公開インタビューセッション」
二日間参加ができない方も参加できるオープンプログラムです。参加者から「自立」をテーマに、自分との付き合い方や自分を理解するってどういうことなのか?など、普段から考えていることや疑問を集め、質問の奥にある考えや感覚を引き出します。

日 時|3月15日(日)10:00ー13:00
場 所|たみ(鳥取県東伯郡湯梨浜町中興寺340-1)
受講料|1人5,000円(昼食付き)
定 員|20名程度

応募方法|下記QRコードからフォームにてお申し込みください。
https://docs.google.com/forms/d/1UqwocKR_fpfLE_l3KDJOjd0na-IbgLkbqntpb2TG7RA/preview

[同時開催]
トークイベント「魂の声を聴く」
日 時|2026年3月14日(土)17:00ー20:00(途中休憩あり)
会 場|汽水空港(鳥取県東伯郡湯梨浜町松崎434ー18) 
入場料|2000円
出 演|尹雄大×七嶋ナオ
定 員|25名
問い合わせ先|kisuikuko@gmail.com


尹雄大(ユン・ウンデ) / Yoon, Woong-Dae
インタビュアー、作家。1970年神戸市生まれ。政財界人やアスリート、研究者、芸能人など約1000人にインタビューを行ってきた。その経験を活かし、2017年から「その人の話を”その人の話”として聞く」というインタビューセッションを行っている。また武術や整体を通して得た知見を踏まえて、身体からコミュニケーションを捉える講座や企業研修も行っている。主な著書に『「要するに」って言わないで』(亜紀書房)、『聞くこと、話すこと。』(大和書房)、『句点に気をつけろ』(光文社)、『異聞風土記』(晶文社)など。
公式サイト:https://nonsavoir.com/

ライター

綵戸えりか

沖縄で生まれた詩誌「ぶーさーしっ」と、全国の仲間と作る詩誌「言葉をさがす旅 Sail」「言葉をさがす旅 Soil」に鳥取から参加しています。皆生で開かれた白井明大さんのワークショップが詩への入口でした。