持続可能なアート活動のために
-鳥取の個人的な芸術と労働についての話を収集する-
美術家・岡田裕子編 9月1日(金)19:00-21:00

「鳥取藝住実行委員会」では現在「鳥取クリエイティブ・プラットフォーム構築事業」に取り組む一環として、県内各地の様々な立場の方々への「労働」にまつわるヒアリングをスタートさせています。それぞれの経験や体験を話していただく場を、美術家の岡田裕子さんをゲストに招き開きます。無料の託児あり。


「鳥取クリエイティブ・プラットフォーム構築事業」では2022年度、鳥取県内各地でアーティスト・イン・レジデンスを中心としたアートプロジェクトを企画・実践してきた団体の皆さんへのインタビュー、プラットフォーム構築のための作戦会議などを行ってきました。

これまでのインタビューでは主に団体の代表者にお話をうかがってきましたが、中でも特に課題として挙げられていたのが「人材不足」であり、現場は常に人が足りておらず、持続可能なプロジェクトの運営には多くのひとの協力が不可欠であることを再認識しました。ただ、ボランティアも含めて多様な関わり方をする個人が参加するプロジェクトの現場では、社会保険や労働に関する契約が結ばれていないことが多く、搾取やハラスメントのおきやすい構造であることは近年、多くの調査で指摘され問題とされてきました 。そのことで現場を離れざるを得ない人も多くいます。

しかしながら、芸術創造の現場ではその行為を単に「労働」と捉え、安定した雇用を目指すことが必ずしも良い結果を生むとは限りません。各々が芸術を必要とする動機や欲求を原動力に自ら主体的に学び、技術を習得していくといった自発的で自由度の高い場を担保することは芸術創造にとって重要であり、公的資金が投入されて安定的な「労働」が用意された瞬間に主体性や目的を失うこともあります。しかし、そのことをもって「やりがい搾取」と言われる構造をそのまま放置することが肯定されるべきではありません。情熱と才能を持った人物の導く「芸術」や「まちづくり」のために、周囲が「ケア」労働に振り回され、時間もお金も浪費するような状況を放置してもそれが「アート」だから、で免罪される時代は終わったのです。アップデートが必要です。

そうはいっても、どんな地域・事例にも当てはまる万能な解決策はありません。現場ではそのような悩みはつきものですが、それぞれの体験や不安を共有し、より良いあり方について、議論を続けることで誰もが安心して参加できる場を目指すこと、何かあった時に連携できる体制を準備しておくことは重要です。

2012年に始まった「アートと暮らしとコノサキ計画」から「鳥取藝住祭」を経てtottoへと繋がる活動は10年を超え、その間に鳥取地域で活動する顔ぶれも多彩になっています。2025年には倉吉に県立美術館も開館するこのタイミングで、あらためて持続可能なアートと暮らしとコノサキを考えるために、団体の中心人物だけでなく、その周りで支える人、アートマネージャー、広報、ボランティア、アーティスト、観客など様々な方にそれぞれが個人的に経験したことをお聞きし、あらためて「個人的なことは政治的なこと」というスローガンを胸に、現実を直視することから始めたいと思います。

すでに7月から非公開で聞き取りをスタートさせていますが、今回は、勉強会も兼ねて公開型とし、美術家の岡田裕子さんをゲストに招き、お話を伺います。

岡田裕子さんは、2021-2022年に米子でのアーティスト・イン・レジデンス・プログラムである「AIR475(エアヨナゴ)」の招へいアーティストとして鳥取との関わりを持ちます。これまでジェンダーに起因する諸問題をテーマとする作品も制作され、数多くの国内外のアートプロジェクトの現場経験をお持ちです。その中でこれまで気になってきたこと、具体的に行動を起こしてきたこと、「アートと労働」をどう捉えて来たかなどの事例を提供いただく予定です。ざっくばらんな参加者の方々とのおしゃべりの中からこれからのことを一緒に考えるヒントを得られたらと思います。無料の託児(事前予約制)もあり。ぜひご参加ください。

ポートレート撮影:北田理純


持続可能なアート活動のために
-鳥取の個人的な芸術と労働についての話を収集する-
美術家・岡田裕子編

日時|2023年9月1日(金)19:00-21:00
場所
|HARI(鳥取県米子市法勝寺町65)
参加費
|無料 ※お菓子など持ち寄り大歓迎!
定員|20名程度

申込方法
以下の申込フォームから必要事項をご記入ください。なお、託児希望の場合は、8月27日(日)までに申込フォームよりその旨をお知らせください。当日は、水筒やおむつ等ご準備ください。体調不良のお子さんはご利用をお控えください。
https://forms.gle/U6wrJDuePDZHLPgY6

ゲスト岡田裕子 / Hiroko Okada
美術家。映像、写真、絵画、インスタレーションなど、様々な表現を用いて、自らの実体験一恋愛、結婚、出産、子育てなど一を通したリアリティのある視点で、現代社会へのメッセージ性の高い作品を制作。近年の活動は、《第11 回恵比寿映像祭》 東京都写真美術館(2019)、《個展「ダブル・フューチャー」》ミヅマアートギャラリー(2019)、《アルスエレクトロニカセンター常設展示》オーストリア(2019)、《個展「誰も来ない展覧会」》 元映画館(2020)。
個人制作以外でも幅広く活動をしている。オルタナティブ人形劇団「劇団★死期」主宰、家族ユニット「会田家」。2020 年以降コロナ禍でも活動は途切れることなく“感染の社会を考える” アート& ファッションの試み「W HIROKO PROJECT」を開始、ソーシャルディスタンスの距離に合わせて形状の変わる服の作品「Di_STANCE」などを発表。
2022 年北九州「もしも、ベラミで」展にて架空のダンス作品「Shall we SOCIAL DISDANCE ?」発表。2022年ヴォイヴォディナ現代美術館(セルビア)にて《SMALL REBOOTS by ARTISTS》展に参加。
作品集に「DOUBLE FUTURE エンゲージド・ボディ / 俺の産んだ子」がある。
https://okadahiroko.info/  

進行岡田 有美子 / Yumiko Okada
キュレーター。前島アートセンターなど沖縄のアートNPOでの勤務を経たのち、文化庁新進芸術家海外研修生としてキューバに滞在。以降、沖縄とキューバの現代美術を中心に展覧会の企画、研究を行う。主な企画に「海の庭 山城知佳子とサンドラ・ラモス」(表参道画廊、2017)、「近くへの遠回りー日本・キューバ現代美術展」(ハバナ・ウィフレドラム現代アートセンター /スパイラルガーデン、2018)など。現在北栄町在住。子育てと仕事の両立を模索中。

主催・問合せ|鳥取藝住実行委員会・ info@totto-ri.net (トット編集部)・090-2409-7984(水田)
助成|中国5県休眠預金等活用事業2021


参考
・NPO法人アートNPOリンク『アートNPOデータバンク』 https://arts-npo.org/databank
・吉澤弥生『若い芸術家たちの労働』(2011)、『続・若い芸術家たちの労働』(2012)、『続々・若い芸術家たちの労働』(2014)
・art for all   https://artforall-jp.org/about/
・表現の現場  ハラスメント白書2021  https://www.hyogen-genba.com/qsrsummary
・猪谷 千香『ギャラリーストーカー-美術業界を蝕む女性差別と性被害』 中央公論新社、2023年。
・吉澤弥生「アートマネジメントと、非物質的労働の価値」『芸術と労働』水声社、2018年。

 

ライター

トット編集部

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