波田野州平
映像みんぞく採集
#12 西岩倉町の純粋壁

映像作家の波田野州平を中心に結成された記録集団「現時点プロジェクト」が鳥取県の各地を巡って、観光案内では紹介されない(されるはずのない)場所や物事に熱視線を注ぎ、映像でレポートを提出します。日々の視界を少しだけ広くする報告書。お忙しい1日の隙間にご覧ください。


倉吉市西岩倉町は江戸から戦後間もなくまで、旅館や料亭がたくさんある花街だった。ここは魚久米(うおくめ)という名の料亭があり、大きな蔵があった。戦後廃業になると建物は解体されるが、大きすぎたのか頑丈すぎたのか、蔵の防火壁だけが残った。支える本をなくしたブックエンドのようなやもめの哀愁など微塵もなく、威風堂々と屹立する純粋な壁にお目にかかれる機会はそうあるものではない。

この純粋壁に分断された隣り合う家の中がどうなっているのか気になるところだが、それはまた別の機会に。
それでは次の隙間でお会いしましょう。

ライター

波田野州平

鳥取生まれ東京在住。辺境と中央を往復して制作(映画を作ったり、ライブを撮ったり、ミュージックビデオを作ったり)しています。今は記録メディアとしての映像の役割にとても興味を持っています。