レポート:「MeetuP vol.03」: アートが繋ぐ多様性と表現の広がり

8月30日(金)から9月3日(火)まで、「鳥取県立バリアフリー美術館 常設展示室作品展示 MeetuP vol.03」が米子市美術館で開催された。本稿では展示の様子をレポートする。


米子市美術館で行われた「MeetuP vol.03」は、障がいのあるアーティストによる作品を展示する企画。この展示は、鳥取県立バリアフリー美術館の常設展示室の作品入替に伴い、新たに収蔵された作品等を展示するもので、オンラインでは味わえない、実物の力を直接感じる貴重な体験の場であった。美術館という物理的な空間で、アートの持つ多様な表現の広がりと、私たちがどのように芸術に触れ、感じられるかを再考させられる展示だった。

米子市美術館は街の中心部にあり、アクセスが良い。会期中は美術館の他の部屋でも様々な展示が行われており、展示スタッフによると、異なるテーマのアートでありながら、来場者が相互的に行き来していたという。これは狙いがあってのことかはわからないが、結果的にこうしたシームレスな展示の形態は、障がいの有無に関係なく、互いのアートに触れる機会を提供しており、その重要性を考えさせられた。

展示は8月30日から9月3日までの5日間と短い会期ではあったが、その中で展示された作品群は、確かなインパクトを与えていた。展示室は5つに分けられ、「色」「生き物」「文字」「心」「集合」という異なるテーマが用意されていた。

作品をいくつか紹介したい。
特に目を引いた作品のひとつは、梅田佳輝の「5mmの世界」であった。5mm四方のマス目をポスターカラーで埋め尽くしたカラフルな点描が印象的で、その緻密な技法と対照的な大きさが、観る者に圧倒的な迫力を感じさせた。同行した家族のひとりはこの作品を「一番印象的だった」と挙げており、入り口付近に配置されていたのもあり、この展示の印象そのものになり得る作品だったのではないか。同じく梅田の「バスターミナル」という作品もまた、無数のバスが画面いっぱいに整列して描かれており、その自由で楽しげな表現に観ている側が自然と笑顔になるような作品であった。


左奥の作品が梅田佳輝「5mmの世界」

「5mmの世界」の隣にあった、濱田聡の「光る木見たくて、やってきた」はアルミテープと針金を使用した作品で、透明感のあるプラスチックダンボールが組み合わされ、素材自体が持つ美しさを存分に引き出している。自然と人工の素材が融合して、独特の存在感を放っていた。

森本賢次の「無題」という2枚の作品は、ベニヤ板に鉛筆で名前や言葉、そしてイラストのようなものが反復的に描かれており、意味を解読することは難しいが、それが逆に作品の魅力を高めている。それぞれの画面は2色で塗り分けられているが、その色は塗料ではなく色鉛筆を用いており、この手法が作品により迫力を与えていた。森本の作品は、シンプルな手法ながらも、作品全体から放たれるエネルギーには圧倒されるものがあった。


森本賢次の「無題」

展示全体を通して、障がいのあるアーティストの作品が持つ力は、技法やテーマの面白さにとどまらず、アーティスト自身の人生や視点を深く表現していることを考えた。もう一点、オンライン美術館で作品を鑑賞することと、実物を前にして感じる体験の違いである。オンラインの利便性は確かに高く、その利便性によって然るべき人たちにアートを届けることが「鳥取県立バリアフリー美術館」の大きな意義だ。一方で、実物を見ることでしか得られない「物質的な存在感」や「その場の空気感」は、やはり特別なものがある。この展示では、オンラインと実物の鑑賞体験が対立するのではなく、むしろ相互に補完し合う形でアートの可能性を広げていた。タイトルの「MeetuP」は、このような多層的な鑑賞体験を象徴しているように感じられる。

「MeetuP vol.03」は、障がいのあるアーティストたちの作品を広く紹介することで、アートの持つ普遍性と多様性を感じさせる展示だった。作品と、その表現を受け止める鑑賞者の間に生まれる対話は展示の本質である。それは決してアーティストの障がいの有無を問わないという当たり前のことが、今回の展示を鑑賞して再確認させられた。


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※この記事は、あいサポート・アートセンターからの依頼を受けて制作したPR記事です。

ライター

野口明生

1985年鳥取県生まれ。場所や企画など作ったりやったりする人。鳥取県中部で活動する「現時点プロジェクト」メンバー。 過去に、とりいくぐる Guesthouse & Lounge、NAWATE、奉還町4丁目ラウンジ・カド、鳥取銀河鉄道祭など。