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2017.8.31

「聾(ろう)者の音楽」を視覚的に表現した無音のドキュメンタリー映画『LISTENリッスン』上映

ここにしかないアート&カルチャーの今を追うレビュー。鳥取で日々動き変化する場所や人々の姿を、丁寧に記録し蓄積していきます。
鳥取県立博物館で、耳の聞こえない聾(ろう)者の音楽を視覚的に表現した映画『LISTENリッスン』が2週にわたって上映されます。初回8月26日は、上映に合わせてダンサーによるワークショップ「もうひとつの、ダンスと音楽」も開催されました。


映画『LISTENリッスン』は、耳の聞こえない人たちにとっての音楽とは何かを、楽器や音声を介さず、身体全体をつかった表現で映像化を試みた58分間の無音の映画です。

メガホンをとったのは、映画監督の牧原依里さんと舞踏家の雫境(DAKEI)さん。お二人とも聾(ろう)者です。牧原さんは視覚や振動に工夫を凝らしたいわゆる聾(ろう)者向けの音楽よりも、ミュージカル映画のダンスやオーケストラの指揮者や演奏者の動きなどから視覚的に音楽を感じ、魅せられてきたそう。そして、手話表現自体に音楽を見出す「手話詩」との出会いが本作の制作につながったといいます。また、雫境(DAKEI)さんは、舞踏を続けるうちに手話自体で音楽を奏でられるのではないかという思いが芽生え、牧原さんとの共作に至りました。

今回は、映画の上映前に、ワークショップが開催されました。参加したのは、小学生2人を含む9人。「聾(ろう)者の音楽」とはどんなものなのだろう、身体と音楽との関係性って?などの興味を持って集った方々です。

講師は、鳥取県琴浦町在住のダンサー、荻野ちよさん。京都を拠点にダンサー・振付家として国内外で活躍し、2014年、地域おこし協力隊として琴浦町に移住。商品開発やまちづくりなどにも取り組んでいます。

約30分間のワークショップで取り組んだのは「呼吸」です。普段何気なくしている「吸う」「吐く」という行為を少し意識して身体とつなげていきます。頭のてっぺんから手や足の指先までを意識し、大きく長く吸ったり、急激に吸ったり、ゆっくり吐いたりしながら、自分の身体の変化を観察しました。さらに「痛みがあるところに空気を送りこんだり…心配事を吐き出したり…」と荻野さんの導きに合わせて、丁寧に身体と向き合います。

続いて、参加者全員で息のアンサンブルに取り組みました。ホワイトボードに記した「△すう」「□はく」「〇とめる」を楽譜に見立て、荻野さんが指揮をとります。

「すう・はく・すう・はく・はく・はく・すう・とめる・はくーーーー」

何人かで息を合わせると、「ふぅ」「はぁ」という息の音が認識できるようになりました。呼吸に合わせて、自然と身体も動いてきます。指揮者に呼吸の大小や長短も細かく求められると、身体の動きはますます大きくなり、意識的に動かしたり、歩いたりという動作に変わっていきました。また、「吸う」「吐く」に緑・黒・ピンク・黄色など色のイメージも加えると、さらに表情が出てきました。

最後は、二人一組になって、息での会話のやりとりです。自己紹介を息だけでやるという超難問に参加者ははじめはとまどった様子でしたが、徐々に動けるようになっていきます。パントマイムのように身体全体で表現したり、かけっこのように一緒に移動したり、二人の間にある空気の塊を渡し合っているようでした。

ワークショップのあと、映画『LISTENリッスン』を鑑賞しました。作品には15人が登場します。国内外で活躍する俳優や舞踏家から演技の経験は一切ないという人まで、出演者の全員が聾(ろう)者です。「音楽とは何か?」というインタビューに「音楽が視える」とか「魂からあふれ出るエネルギーに音楽を感じる」などとこたえる彼らは、浜辺、河川敷、カフェ、ビルとビルの間など、さまざまな場面で、手や指先、表情、身体全体を動かしながら音楽を奏でていきます。それが手話なのかどうかわからなくても、そのしなやかで美しい動きに惹き込まれていきました。

普段から楽器を演奏するという女性は「ワークショップでは、リズムも何もないところでお互いの息のやりとりをするのがおもしろかった。映画でも、何もないところにリズムが生まれ惹き込まれた。あるものを再現するのではなく、自分の中にどういうリズムや音楽が生まれてくるのかを考えながら演奏出来たら楽しいと思った」と話していました。

また、ワークショップで講師を務めた荻野ちよさんは「映画を見て、どこからダンスで、どこから音楽なのか、そのグラデーションが印象的だった。ワークショップでは、誰にでも一番身近にある呼吸から音楽やダンスに発展していけるということを最初の一歩としてやってみたかった」を振り返りました。

映画『LISTENリッスンは』は、9月2日(土)にも鳥取県立博物館で上映されます。次回は共同監督の牧原依里さんと雫境(DAKEI)さんのお二人によるアフタートークが行われます。


鳥取県立博物館・鳥取県文化振興財団 連携企画
~からだで聴く、音楽を視る~

映画『LISTENリッスン』上映&アフタートーク
9月2日(土) 上映14:00~/アフタートーク15:10~予定
※この回はワークショップはありません

会場 鳥取県立博物館 講堂(鳥取市東町2-124)
料金 無料
申込 不要
対象 小学生以上
手話通訳あり

イベント公式サイト
http://cms.sanin.jp/p/zaidan/5/1/1/3/2/

映画『LISTENリッスン』公式サイト
http://www.uplink.co.jp/listen/

ライター
濱井丈栄

濱井丈栄

1979年広島市生まれ。フリーアナウンサー。元NHKキャスター・リポーター・ディレクター。広島・鳥取・東京に勤務し、自ら取材し自分の言葉で伝えることを生業にしてきた。2014年、夫の転勤で再び鳥取へ。同年立ち上がった「鳥取藝住祭」の事務局にたまたま声をかけられたことをきっかけに、アートをいかした地域づくりに関わるようになる。最近の趣味は、さまざまな作家さんのワークショップに行くこと。特にものづくり系が好き。photo:田中良子

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