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2019.2.11

まだまだ成長中!
東京都三田のセルフビルドビル「蟻鱒鳶ル」
13年の軌跡と岡啓輔さんのこと

1月26日(土)湯梨浜町にある本屋、汽水空港にて、岡啓輔さん(建築家)と尹雄大さん(ライター)によるトークイベントが開催されました。汽水空港は、店主の森哲也さんがセルフビルドで手掛けたもの。森さんは自ら汽水空港を施工する以前に、岡さんの建築現場を手伝い、そこで「つくる悦び」に人生をかける岡さんに深く感銘を受けたといいます。そんな岡さんに、世の中に対し戸惑いながらも「考える」事を続けてきた尹さんがインタビューすることで、聴く人にとってより有意義なものになるだろうと、森さんがトークを企画しました。吹雪の中での開催でしたが、40名以上の参加者で満員となりました。


このイベントは前半に、岡さんの単独トーク、後半は尹さんから岡さんへのインタビュー形式でのトーク、という二部構成。
いつもは気心知れた友人知人の多い汽水空港だけど、今回のトークでは県内外からの参加者で埋め尽くされ、彼らの期待感に僕は少し緊張を覚えた。でもトークの開始早々、「忘れ物しちゃいましたー!」とあっけらかんと話し出す岡さんの、間合いをはかりつつ強く押し進むような独特の喋りは、ぬるっとした生コンクリートを連想させる。さすれば参加者たちはそれを受け止める型枠だ。岡さんの言葉が、ゆっくりと会場に流れ出し、度々起こる笑い声がその場の空気を撹拌し、次第に会場は楽しい雰囲気へと、形を変えていった。

岡さんのつくる、蟻鱒鳶ルには、建築のエリート街道をゆく国内外の学生たちが訪れ、中には、「現代にも、魂を込めてつくる建築が存在していたのか!」と感動する学生もいるという。その謎を知りたくて、僕は岡さんの言葉を聴いた。

「つくる」人をバカにする時代。でも「つくる」ことは「楽しい」こと!

岡啓輔さんは東京都港区、三田に「蟻鱒鳶ル」(ありますとんびる)という鉄筋コンクリート造のビルを一人で建築している。福岡県に生まれ、「建築家になるぞ!」と、上京し、鳶職、鉄筋屋、型枠大工、住宅の大工など、職人としての経験を積みながら、建築の勉強を続けてきた。しかし現場で扱う素材が放つ化学物質が岡さんの体をひどく蝕み、住宅メーカーの大工をはじめて3年ほど後の1998年、仕事から離れざるを得なくなった。1999年に結婚。それを機に、自分たちの家を自分でつくることを決めた。建築をつくるチャンスはこれが最後。そう思うと、土地を購入し建築準備が整っても、なかなか工事を始められず、そのまま時が過ぎた。

でもぼんやりと5年以上を過ごしたわけではない。有名建築家たちがスマートな建築を設計していく一方、主軸を現場に置いてきた岡さんは、建築においての「つくる」という行為から、現代建築を考える視点を持つようになり、さらに「つくる」行為を伴う他の分野に関しても、現代社会は「つくる人をバカにしている社会だ」という問題意識を持つようになっていった。身体を壊すまで、「つくる人」としてバカにされたまま生きるのではなく、「東京にケンカを売るような気持ちで建築を作っていかないとダメだ!かっこいいとか、美しいとかではなく、どんなに下手クソでもいいから、自分がつくった何かがでるものを作ろう」という気持ちになったという。 さらに「楽しいという気持ちで作った建築が良い建築」という考えを持った東京大学名誉教授で建築史家の、故・鈴木博之さん(1945-2014年)の存在を知る。 そして、「かっこいい」ということより、「楽しんでつくる」ということをしっかりやっていこう、という方針が固まったという。こうして「蟻鱒鳶ル」は2005年に着工。現在も生き物のように成長を続けている。

「楽しい」ところまでとにかく考え抜く

トーク後半は、建築の他に即興で「踊り」でも表現をする岡さんに対しての、尹さんの問いから始まった。

「踊り」は考えて動くのではなく、考えを追い越すようにして不意にでる動き、に面白さがあるという。建築でも、出来上がったものの形を観察して「考える」という事をしながらつくっていく。その過程は「踊り」から影響を受けたつくり方かもしれないという。岡さんは自分の、考え抜くという能力に強い自信を持っている。悔しくて眠れないほどの逆境にあっても、「よし、今日は朝まで考え抜くぞ!」と決めて、ひたすら考える。すると、必ず解決策が浮かび、そして「楽しい」と思えるところまでその発想を巡らせることができると、信念を語っていた。

「蟻鱒鳶ル 小」と名付けられたボトル型のコンクリート。会場で販売された。再開発で長引くことが予想される「蟻鱒鳶ル」を完成させるため、岡さんはいま資金集めと広報活動に力を入れている。

「考える」人と「つくる」人が切り離され、無表情の物体をつくることが主流の現代の建築界で、「考える」と「つくる」を一人で実践する岡さん。でもその姿は、苦しい戦いに孤独に挑む人ではなく、自分で裁縫した服に身を包み、豊かな感情を全身で表現する、とても「楽しい」人だった。そしてその楽しさは、圧倒的な熱量を持って僕たち話を聴く人に確実に伝播していたと思う。岡さんを慕って訪れる人が多いこと、仲間に支えられながらひた走ることを可能にしてきた岡さんの魅力を感じられた日だった。
僕にとっても「つくる」ことは身近にある。楽しいと思える半面、そうでない時も確かにある。でも、楽しくない時も「考える」ことでまた「楽しい」を引き出すことができるのだと、岡さんの話から知ることができて、それがとても良かった。

中央に立つのは汽水空港店主の森さん。セルフビルドで建てた店を岡さんに見てもらいたいとずっと思っていたという。今回のトークでそれが実現できたことをとても喜んでいた。

蟻鱒鳶ル保存会HP
http://arimasutonbi.blogspot.com/

ライター
岩田源太

岩田源太

1985年茨城県水戸市生まれ。玉川大学芸術学部卒。現代アート作家になりたくて、内定を断り、杉並区で、数年間暮らす。結局実家に戻り、何もしない日々を過ごすが、26歳の時、もう少しちゃんとしよう!と、就職するため再び上京し、桑沢デザイン研究所に入学。都内で3年間、会社員として勤めた後、現在、内装業などをしながら、鳥取市浜村の喫茶ミラクルにて生活中。

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