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2018.11.20

人と土地の記憶を映像で記録するプロジェクト
「私はおぼえている」キックオフ上映会 レポート

鳥取に暮らす方々へのインタビューを行い、その方の半生とそれに結びつく土地の記憶を映像で記録・公開していくプロジェクト『私はおぼえている』。2018年10月20日(土)に開催された初の公開上映会には、130名近くの方が足を運びました。個人の話を聞いて集めていくその先に、私たちはどんなことを考え、どんな時を繋いでいくのでしょうか。主催した「現時点プロジェクト」のメンバー野口明生さんが、上映会当日の様子を寄せてくれました。


今年撮影し、完成した2本の上映
『私はおぼえている』は、「あなたの人生は語り伝える価値がある」という考えのもと、鳥取県内の方を対象に、インタビュー形式で映像撮影を行い、その記録を保存・活用していくもの。「現時点プロジェクト」として今年から取り組みはじめた活動です。この活動を皆さんに知っていただく目的で、今年完成した映像2本を用意し、はじめて行ったのが今回の上映会でした。

会場とした倉吉交流プラザ・視聴覚ホールには、約130名の皆さんにご来場いただきました。新聞や市内の回覧板で告知したこともあってか、来場者は60代以上が7割超。このテーマへの世代的な関心の高さを感じました。

今回上映したのは、倉吉市関金町小泉の小椋久義さんと、湯梨浜町小浜の小谷重信さんの映像。小椋さんは、幼いころに死別した母、大東亜戦争のこと、開墾したワサビ田と養魚場の成功に至るまでの濃密な一代記を語ってくださいました。小谷さんは、日本海に面した小さな村「小浜」で生まれ育ちました。幼いころ手伝った「貝殻とり(ホタテ漁)」の記憶や、湾に迷い込んだマグロの群れ、自身の出征のことから現在の楽しみまで話は続いていきました。

どちらも100歳を目前にした男性。鳥取の山や海で暮らした記憶や、幼少期の家族の思い出とともに、暗い戦争の記憶も深く刻み込まれていることを、改めて実感することになりました。会場には、普段のお二人のことを知る方も多数来場されていて、映像での快活な語り口に、時折、客席から大きな笑い声が起こることもありました。制作した作品が鑑賞者と結びつく、上映会ならではの瞬間を実感しました。
 

想起されるのは、自らのことや身近な人のこと
会では、映像上映のほか、webマガジン『雛形』編集長の森若奈さんをゲストに、映像を撮影した波田野州平、コーディネーターである上所俊樹、そしてプロジェクトメンバーの私、野口明生の3人が登壇し、企画の目指すところや撮影の経緯などをお話しするパートを織り交ぜながら進行しました。来場者からは「観ているうちに自分の肉親のことを思い出した」という感想をいくつもいただきました。他人が話す映像を観ながら自らのこととして喚起されるものがあった、というのは我々にとって大きな手応えでした。一方で「コンセプトの理解が難しかった」などの感想もあり、世代や属性を超えて理解できる言葉選びやデザインの必要性を感じました。人の話を記録して公開するというシンプルなプロジェクトであるからこそ、それを難解にしないように心がけたいと思います。

このプロジェクトの特徴を挙げるとすれば、私たちは決して、英雄的な話や、今日からすぐに役立つ類の話を集めようとしているわけではない、ということです。それよりも、その人の醸し出す空気やその人にしかない言葉で語られるものをそのままの形で残したいと考えています。例えば戦争のような当時の誰もが通り過ぎた歴史の出来事においても、話を聞けば必ず一人一人が違う体験をし、強い印象を抱いた点も異なるものです。語られたことの中には、思い込みと思われる点、年号や数の間違いなども含まれることがあるかもしれません。しかしそうした内容も踏まえて、語っていただいたその方にとっての「真実」とは何だったのかに、重きを置いています。

今回上映した映像はYouTubeにて公開していますので、未見の方もぜひそちらからご覧ください。広く観てもらえる環境を用意することで、その活用を広く考えていただくことを期待します。今後、現時点プロジェクトとしての新たな提案もするつもりです。なお、12月16日(日)の13時よりよなご映像フェスティバル(会場:ガイナックスシアター)内でも上映されます。その後も2019年2月頃に新たな映像も加えての上映会を行う予定で、来年度中には合計15本の映像の完成を目指しています。

最後となりましたが、小谷重信さんが上映会の前夜である10月19日に、そして小椋久義さんが11月16日に亡くなられました。改めて、このお二人が語る姿をひとりでも多くの方に観ていただきたいと思うとともに、心からご冥福をお祈りします。

写真:河原朝子


『私はおぼえている』
第一話 小椋久義さんと家族の記憶
第二話 小谷重信さんと海辺の記憶

※YouTubeで映像をご覧いただけます。

現時点プロジェクト
2017年1月にスタートした、生活習慣や生活用品、伝統行事や人々の記憶、自然環境などを映像と写真で記録保存し、アーカイブ資料を一般公開することをメインの事業とするプロジェクト。日常の中にある小さな驚きや、忘れられていた大切なことを発見していくことを目的とする。昨年は、バス停に置かれた椅子を通して地域コミュニティーのあり方を考える展覧会『バス停や椅子』を倉吉市内で開催。また、当ウェブマガジン「totto(トット)」上では波田野州平の映像レポート『映像みんぞく採集』を連載中で、日常の中にある発見を記録する行為を基点とした活動を行っている。

 

ライター
野口明生

野口明生

1985年三朝町生まれ。 2013年より岡山市で『とりいくぐる Guesthouse & Lounge』『NAWATE』『奉還町4丁目ラウンジ・カド』などを立ち上げ運営。現在は、鳥取市を中心に鳥取県総合芸術文化祭・とりアート2019メイン事業『鳥取銀河鉄道祭』事務局として活動中。

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