淀川テクニック(アーティスト)#3
鳥取の海でゴミを探すと、僕は大陸との繋がりを感じます

ゴミや漂流物などを使い、様々な造形物を制作することで知られるアーティスト、「淀川テクニック」こと柴田英昭さん。今後の活動や、2024年度に開館予定の県立美術館に望むことなどを教えていただきました。


- 最近取り掛かっているプロジェクトはどんなものがありますか。

淀川テクニック:結構春先から予定がぎゅうぎゅうだったんですけれど、コロナで全部延期になっちゃって、でもいくつか大きなものは残っています。中国地方はないですけれど、九州とか関西でとかで何件か。もう秋から来年ぐらいで決まっていて、まだこれやりますとは言えないんですけど、考え始めているものが幾つかあります。

- 鳥取県立美術館が2024年度に開館予定ですが、美術館に望むことがあれば教えてください。

淀川テクニック:僕もともとアートの歴史とか全然勉強していなくて、結局淀川テクニックとしてアーティストをはじめてから、いろんな人の作品観たりするようになったんです。だから、アートってアーティストだけが作るわけじゃなくって、結構色んな方、こうして取材してくださる方とか、美術館で仕事している方とか、作品を買ってくださる方とか、ギャラリーの人とか、みんなが行ったり来たりしながら盛り上げていくものなのかなと思っていて。やっぱり美術館って、なんというかな、僕から見たらすごい権威だから、そこで扱ってもらうことが、アーティストのランクを上げたり歴史を作ったりしていくことになるのでとても期待しています。アーティストがアトリエで面白い作品作っただけでは、色んな人が見たり買ってくれたりしてくれないので。

取材同日には「Pass me!(鳥取県立美術館ができるまでを伝える現状報告マガジン)」03号のための撮影も行われた

と言いつつも、やっぱり日本でアートって言うと、主要な美術館は都市部にあって、話題になるとすれば大きな東京の美術館とかになるから、僕としてはこう、鳥取とかから、世界に通用することや実験的なことが起こっていくと面白いなと思っていますね。何と言うか、もちろんお堅い展示も大事なんですけど、実験的なこともどんどんやってほしいなと思いますよ。

- そうですね、美術館って過去を掘り起こしていく大事さに加えて、新しいことを切り拓く力もまた求められるように思います。

淀川テクニック:せっかくなので、面白いことができたらなと。逆に僕も観てみたいなと思いますね。

- 鳥取の美術館に特に期待すること、鳥取ならではのコトってありますか。

淀川テクニック:そうですね、鳥取の海でゴミを探すと、よく大陸系のものを拾うんですけど、鳥取の人はそれを嫌がっている方が多いかと思うんですが、僕は逆に、大陸と繋がっているなって感じるんです。繋がっているから流れてきているし、本当はゴミだけじゃなくて文化も流れてきていて。以前、県立博物館でも展示されていたと思うんですが、江戸時代に、朝鮮半島からの船が遭難して鳥取に流れ付いたときに世話してそのお礼としてハングルで書かれた感謝状(1)をもらったりして、そういう交流って起こっていますよね。そういうアジアとして盛り上がれるようなことができたらいいなと思います。

ライターだけを仕分けて丁寧にストック。「カラフルで綺麗でしょ」と柴田さん

- 確かに、すごく昔から交流していたはずなのに、今は意識が向かなくなっている感じがあります。

淀川テクニック:アジアってアートの世界では今すごい元気で、たぶん西洋のアートは掘りつくされちゃっていて、未知なものはまだまだアジアに眠っているんだという期待値が高いと感じてます。そういうものも含めて、作品もそうだし人材もそうだし、交流っていう意味でもそうだし。せっかく日本海に面しているわけなので、鳥取はそういう意味では有利ですよね。

- 柴田さん自身がアジア圏で活躍される機会は多いですか。

淀川テクニック:最初、淀川テクニックで展示した時に、韓国の「釜山ビエンナーレ」(2006年)っていうのに出たことがあって、釜山の川で拾ったもので作ったことがあったんです。かなり初期で、大きなお魚を作ったのはそこが初めてだったんですけど。あと、インドネシアのジョグジャガルタでは「日本現代美術展「KITA!!」」(2008年)という展覧会で作ったりとか。作品の展示だけなら香港と台湾でもありますね。

- 香港は大きなアート市場としても注目されていますよね。

淀川テクニック:香港なんかは今すごいですね。僕はたまたまその4か所でしか活動経験ないですけれど、もっと面白い人達がいたりとか動きがあるから、そういうのを巻き込んでアジアで大きなうねりができたらいいのかなって思いますよ。

淀川テクニック《ジョグジャカルタのアロワナ》2008年
淀川テクニック《ジョグジャカルタのアロワナ》2008年(部分)

- 新しくできる美術館は、「県民と一緒に作る」っていうのがコンセプトとしてあるみたいです。でも、私の周りの、トットの活動に興味を持っていたりなにかしら芸術や文化的な活動をされていたりする人でさえ、県立美術館についてはあんまり興味がないのか、反応が薄いんですよ。もうちょっと意見を出してアイディアとして反映されるようにしていけたらいいなと個人的には思うのですが…

私はすっごい座りにくいけど柴田さんの作る椅子とか、ぜんぜん物置いたりできないけれどテーブルとか、あとゴミ箱とか…ゴミがゴミ食べてたら面白い。そういうのもが、美術館の中にあったら嬉しいな…と個人的に思います。無責任に発言していますが(笑)

淀川テクニック:ぜひ要望出してください(笑)

《おわり》

トップ写真、および本文1・2枚目写真:野口明生
その他の写真:Courtesy of the artist and YUKARI ART

※この記事は、令和2年度「県民立美術館」の実現に向けた地域ネットワーク形成支援補助金を活用して作成しました。また、鳥取県立博物館が発行する「鳥取県立美術館ができるまで」を伝えるフリーペーパー『Pass me!』03号(2020年10月発行予定)の取材に併せてインタビューを実施しました。


1:「漂流朝鮮人之図」(文政二年、鳥取県立図書館 蔵)。朝鮮半島からの漂着民たちが町会所に滞在していた際に小田蛙村によって描かれた絵と、安義基船長からの感謝状を組み合わせて表装されたもの。謝恩状は長崎まで同行した岡金右衛門に宛てられたもので、別れるにあたって感謝の気持ちを述べたものと考えられている。


淀川テクニック / Yodogawa Technique
柴田英昭(しばたひであき、1976年岡山県生まれ)のアーティスト名。 2003年に大阪・淀川の河川敷を拠点として活動開始。ゴミや漂流物などを使い、様々な造形物を制作する。赴いた土地ならではのゴミや人々との交流を楽しみながら行う滞在制作を得意とし、岡山県・宇野港に常設展示された「宇野のチヌ」「宇野の子チヌ」は特によく知られている。また、東日本大震災で甚大な津波被害を受けた宮城県仙台市若林区で地元の方々の協力のもと被災した防風林を使った作品を制作した。その他、「釜山ビエンナーレ」(2006)やインドネシアで開催された日本現代美術展「KITA!!」(2008)、ドイツ・ハンブルグと大阪で同時開催された「TWINISM」(2009)、モルディブ共和国初の現代美術展「呼吸する環礁―モルディブ・日本現代美術展―」(2012)など海外での展覧会参加も多い。その活動や作品は国内外のテレビ、新聞などのマスメディアで多く取り上げられている他、小学校や中学校の美術の教科書でも大きく紹介されている。 活動開始当初は柴田が大阪文化服装学院で1学年下の友人・松永和也(まつながかずや、1977年熊本県生まれ)に声をかけてはじまったアーティストユニットであったが、 現在は柴田のソロ活動。柴田は「淀川テクニック」として、作品の制作のみならず、その独創的なアイディアを活かした様々なワークショップを全国各地で開催する他、「コラージュ川柳」の発案者・考案者でもある。2018年、「ゴミハンタープロジェクト」を新たにスタート。この活動は淀川テクニックがこれまでの経験をふまえ、国内のみならず世界中のゴミを求めて旅をし、目撃した現状を作品という形で伝えることでゴミ問題をより広く考えるきっかけをつくることを目的にしている。
https://yukari-art.jp/jp/artists/yodogawa-technique/

ライター
水田美世

水田美世

千葉県我孫子市生まれ、鳥取県米子市育ち。東京の出版社勤務を経て2008年から8年間川口市立アートギャラリー・アトリア(埼玉県)の学芸員として勤務。主な担当企画展は〈建畠覚造展〉(2012年)、〈フィールド・リフレクション〉(2014年)など。在職中は、聞こえない人と聞こえる人、見えない人と見える人との作品鑑賞にも力を入れた。出産を機に家族を伴い帰郷。2016年夏から、子どもや子どもに目を向ける人たちのためのスペース「ちいさいおうち」を自宅となりに開く。