南 阿沙美(写真家)#1
無になったときに面白い写真が撮れて、自分が見てびっくりする

今年2冊の写真集『MATSUOKA!』と『島根のOL』を出版した写真家の南阿沙美さん。2014年から鳥取・島根に何度か訪れており、シリーズ「島根のOL」は鳥取での撮影がきっかけとなって誕生したのだとか。
2016年から、年賀状やフリーペーパーの撮影、写真集『島根のOL』のデザインなどで交流してきた「うかぶLLC」の蛇谷りえさんが、改めて南さんに「作品」のこと「自分」のことをインタビューしました。


― 私たちが運営してる湯梨浜町のゲストハウス「たみ」で南さんと最初に出会って、そのあとも鳥取で何度か会っていて、それから今も仕事をさせてもらっていますが、もともと「たみ」に来たきっかけは何でしたっけ?

:「たみ」には2014年に来ていて、3年ぐらい働いた撮影スタジオを辞めてすぐのときでした。ずっと写真を撮っている親子がいるんですが、結婚して島根に引っ越した友人を訪ねるために一緒に山陰旅行に行くことなって。そのとき、東京の武蔵小山にあるお店AM・A・LAB(アマラブ)で「たみ」をおすすめされました。「たみ」のHPをみたら写真禁止だったから、電話で撮影について相談しましたが、めんどくさくなってそのときは結局写真は撮らずに普通に泊まりました(笑)。
「たみ」へ行ったときに、ちょうど蛇谷さんや三宅航太郎さんたちがパトリック・ツァイ(写真家/キャノン写真新世紀2011優秀賞受賞)とプロジェクトしてましたよね。パトリックとはそこで初めて出会って、そのあと「たみ」から東京に戻って1週間くらい後に「MATSUOKA!」で写真新世紀の優秀賞をいただきました。2014年です。そしてこの写真集『MATSUOKA!』は、今年5月に刊行したんです。いろいろつながってますね。

写真集『MATSUOKA!』(Pipe Publishing、2019年5月)より
写真集『MATSUOKA!』(Pipe Publishing、2019年5月)より

― そうでしたね!「たみ」でも2014年の出会いから南さんの活動をチェックしていました。あと、「うかぶLLC」の年賀状の写真を2017年は南さんに声をかけさせてもらいましたよね?

:その年賀状の依頼の前に、友達のライブについて行って、「たみ」の姉妹店として鳥取市にオープンして間もない「Y Pub&Hostel」に泊まったのが、2016年7月で。そこで三宅さんと再会したんです。それで、12月に年賀状の撮影をして、そして3月にフリーペーパーをつくったんですよね。

「うかぶLLC」の2017年の年賀状に使用した写真(2016年12月撮影)

― 鳥取を舞台にした写真のフリーペーパー「豆腐の角にぶつけた頭2017 vol.1」を作りたいと相談したら、「人が撮りたい」と南さんから提案があって、南さんが出会った一般の人たちをモデルに撮影したんでした。そこで「島根のOL」のモデルになった方が出てますよね?

:フリーペーパーでは、鳥取に住んでる人にも声を掛けたんですが、となりの島根県に住んでる友人のくみちゃんもお願いしました。鳥取で撮影しながら、普段なにしてるの?と話をきいたら、OL。って言われて、意外だなと驚いて。後日、制服の自撮り写真を送ってもらったら、めちゃくちゃよくて。今度会うとき制服着て撮らせてよ。と話が進んで、2017年5月のGWから「島根のOL」の撮影がスタートしました。フリーペーパーのときから、彼女の写真がどれも良くて。いろんな人もたくさん撮影したんたけど。彼女の写真だけにしてもいいぐらい。この一番大きい腕立てポーズの写真とか、4カットくらいくみちゃん。

フリーペーパー「豆腐の角にぶつけた頭2017 vol.1」(2017年3月)より

― 写真のモデルとして、惹かれるものがあったんですね。そこから「島根のOL」の撮影が始まったんですか?

:くみちゃんを撮りたいと思ったのは、OLっぽさの無さ。似合わなさ、いつも遊びでしか会ったことなかったから、カジュアルな服装の彼女しか知らなかったんですよね。普段はOLとして制服着て働いている不思議さ。普通の日は忙しいから、GWとかまとまった連休のある日に、島根に行きました。2年くらい通ってます。
「MATSUOKA!」は、事細かにポーズの指示をしてるけど、「島根のOL」は、「掴まって」「立って」「なんかして」とかざっくりしたオーダーをする。彼女が「ええっ」て迷いながら動く姿を撮ってる。本人も可愛く撮られたい、という願望がなくフラットなのがいいんです。でも可愛いですけど。フリーペーパーのときもそうで、ゴールを狙って撮ってるんじゃなくて、その途中込みで撮影しているから。

写真集『島根のOL』(salon cojica、2019年8月) デザイン:三宅航太郎(うかぶLLC)
写真集『島根のOL』(salon cojica、2019年8月)より

:「たみ」と同じ湯梨浜町にある本屋「汽水空港」の店主・森哲也くんも撮影してるんですよ。「だれかの彼氏」っていう写真シリーズを2年間やったことがあって、毎月1人ずつ、男の人を自分で探して撮ってたんです。24人目の最終回は森くんでした。ウェブサイト「中2イズム」で連載してました。一般の人っていっても、誰でもいいわけじゃなくて、近い感じの人ばかり続くのも避けたいし、自分で見つけるって決めたから、人に紹介してもらう訳にもいかないし。毎月撮らせてもらう人を探して連絡するのが大変でしたね。

写真シリーズ「だれかの彼氏」vol.24は汽水空港の森哲也さん(2016年撮影)

― 今年は写真集が2冊刊行して、今までの活動がまとまった感じがありますが、最近考えていることはなんですか?

:なんでもいいですか? 川の近くに住みたいな。今日泊まった「たみ」の部屋が朝も夜もずっと川の音が聞こえていいなーと思いました。あと、広い部屋に住みたい。東京に住まなくてもいいな。と思ったり。
2冊しっかりしたものを作ったから、もうちょっと自分でじゃんじゃん細かくアウトプットしてもいいなー。とか、いろいろ考えはありますね。
昨日1日中、本屋にいたら、本をめくっただけで、自分の知らなさを知るから、「すごいな!よく知らずに生きてるな。」と、みんなが知ってるようなことを知らない自分に驚きます。
ただ、自分のアウトプットに関しては、自分の知っていることを作品にしているわけではないから、作品とは関係ないです。知っていることをアウトプットしたいわけじゃないから、「作品」と「自分のこと」はあんまり関係ないです。関係あるのかもしれないけど。考えるのをやめてもできるのが写真だから。私の場合、考えて撮ってる写真は超つまんなくなっちゃう。自分が一瞬無になったときに面白い写真が撮れて、自分が見てびっくりするから。それはそういう感じでこれからもやっていくべきなんだろうなって思いますね。

撮影協力:汽水空港

《#2へ続く》


南 阿沙美 / Asami Minami
1981年北海道札幌市生まれ。2014年キヤノン写真新世紀優秀賞受賞。2019年5月に写真集『MATSUOKA!』(Pipe Publishing)、8月に『島根のOL』(salon cojica)を発表。そのほか「親子写真入門」「sheHerHers」「オートマチック乙女ちゃん」「ハトに餌をやらないでください」等の作品を個展・グループ展で発表している。
http://minamiasami.com


写真展『島根のOL』
会場|Y Pub&Hostel(鳥取県鳥取市今町2丁目201 トウフビル1F・2F)
日時|2019年10月8日(火)-10月29日(火) 午前の部7:00-10:00/午後の部18:00-24:00
http://y-tottori.com

会場|NU(島根県松江市白潟本町10番地 園山ビル2F)
日時|2019年11月2日(土)-11月4日(月)14:00-21:00
※11月2日(土)、3日(日)両日とも19:00からライブイベントあり
http://nurecords.jp

写真展『MATSUOKA!』
会場|汽水空港 (鳥取県東伯郡湯梨浜町松崎434-18)
日時|2019年8月28日(水)-9月18日(水)11:00~19:00 ※木曜日定休
https://www.kisuikuko.com

会場|ラーメンやんぐ(静岡県三島市北田町6-21)
日時|2019年9月23日(月)-10月12日(日)11:30-15:00、17:30-20:30 ※木日、第一・第三水曜定休

ライター
蛇谷りえ

蛇谷りえ

1984年大阪生まれ。2012年に「うかぶLLC」を設立し、共同代表の一人。うかぶLLCでは、鳥取県は湯梨浜町にある「たみ」と、鳥取市にある「Y Pub&Hostel」を経営している。また、鳥取大学地域学部教員の合同ゼミ「鳥取大学にんげん研究会」やアートプロジェクト「HOSPITALE」のマネジメントなど、ある世界の中で、サテライト的な関わりであれこれつなげるのが得意。”外”担当。 photo:Patrick Tsai