CONNEXIONS展関連イベント:刷音によるトーク&シルクスクリーン印刷会レポート
2026年2月22日、鳥取県立美術館で開催中のCONNEXIONS展の関連イベントとして、刷音(シュアイン)さんによるトーク&シルクスクリーン印刷インベントが開催されました。今回で2回目となるイベントの様子をお届けします。
現在、鳥取県立美術館で開催されているCONNEXIONS展は、さまざまな領域で深まりつつある分断や対立を前にして、「繋がり」の再発見、あるいは再発明の可能性を私たちに示している企画展だ。その関連イベントとして行われた今回のプログラム、アキラ・ザ・ハスラー×竹川宣彰「ライブZINE制作&シルクスクリーン印刷会」には、出展アーティスト「刷音(シュアイン)」から竹川宣彰さんとアキラ・ザ・ハスラーさんの二名が登壇し、前半はトーク、後半は彼らの代表的な活動であるシルクスクリーン印刷会が行われた。

イベントに参加するにあたり、私はオープニングセレモニーでの竹川さんの発言を思い出していた。彼は、刷音という集団は「パーティー」だと語っていた。日本と中国のミュージシャン、美術家、パフォーマーなど、多様なバックグラウンドをもつ人々が集まり、開かれたかたちで交わる場。それは単なる比喩ではなく、彼らの実践そのものを言い当てている言葉だと、今回あらためて実感した。分断や対立のきっかけが至るところに潜む社会において、どちらの側につくのかを絶えず問われる状況からいったん身を引き、まずは楽しさを共有する場をつくること。刷音の活動は、そんな柔らかな抵抗のかたちにも見える。

トークでは、2018〜19年の南京での活動や日本国内でのプロジェクトを写した写真を手がかりに、刷音の歩みが振り返られた。刷音は2018年、中国・南京で結成されたという。だが竹川さんは「刷音は日本と中国のあいだで生まれた」と語る。地理的には南京かもしれないが、刷音は日本と中国のどちらでもない、あるいはどちらでもあるような「あいだ」に位置する集団だというのだ。この「あいだ」という感覚は、CONNEXIONS展のテーマとも強く響き合っている。
南京という場所は、日中それぞれにとって歴史的・政治的に重い意味をもつ都市である。そのことを無視するわけでも、単純に乗り越えるわけでもなく、刷音は「あいだ」に身を置くことで別の回路を開こうとする。どちらか一方に回収されない立場から立ち上がる表現。その姿勢は、昨今の情勢の中で立場の表明が強く求められる空気への一つの応答のようにも感じられた。

とりわけ印象に残ったのは、直接的な政治性にコミットしないのは「南京に対する歴史化あるいは政治化されたイメージではなく、南京にある暮らしのディテールを感じるため」という言葉だった。それは脱政治化でも歴史の忘却でもない。むしろ、大きなナラティブに回収されない複数のリアリティを、重層的に受けとめようとする態度である。「単一の歴史というよりは、複数の歴史が重なりあっていて、その一つひとつが厚みをもっている」。そう語る竹川さんの言葉は、場の空気を静かに変えていった。
複数の版を重ねることで一つの像を形づくるシルクスクリーンという技法が、刷音のアイコニックな活動となったのも偶然ではないだろう。異なるイメージが干渉し、時にずれながら重なっていく。そのプロセス自体が、彼らの思想を可視化しているように思えた。

後半のシルクスクリーン印刷会は、まさに「パーティー」と呼ぶに相応しい賑やかな場になった。子どもから大人までが思い思いの版を選び、はじめは恐る恐るTシャツにプリントする。インクをのせ、スキージーを滑らせ、版を持ち上げる瞬間の小さな緊張と喜び。今回は2回目の開催ということもあり、リピーターの姿も多く見られた。経験者が自然と隣の参加者にコツを教える光景もあり、そこには指示や号令のない、自発的な繋がりが生まれていた。また、用意された版は今回の展示の一部となっているもので、CONNEXIONS展のために日中のアーティストたちが新たに制作したものだ。それぞれのイメージには作家ごとの「現在」の切り取り方や、刷音として共有してきたテーマが込められている。特に繰り返し現れるのが、唐辛子やホタテ貝、熊などの象徴的なモチーフだ。これらのモチーフの背景や意味は、CONNEXIONS展を見てもらうと理解できるようになっているので、ぜひ展示そのものを通して体験してほしい。

手を動かし、インクの感触を確かめながら、自分だけの一枚をつくる。そこには思想の説明よりも先に、身体を介した理解がある。楽しさを共有するという単純な行為のなかで、ゆるやかで自発的な繋がりが立ち上がっていく。その光景こそが、今回のCONNEXIONS展が提示する「つながり」の、もっとも実践的なかたちだったのかもしれない。今回で2回目となった刷音のイベントであるが、全4回が予定されている。気になる方は残り2回のパーティーにぜひ参加してもらいたい。
取材:新松寛明
写真2枚目以降提供:鳥取県立美術館 photo: Ryoko Tanaka
企画展〈CONNEXIONS コネクションズー接続するアーティストたち〉
会期|2026 年2月7日(土)~3月22日(日)
会場|鳥取県立美術館 3F企画展示室、1Fひろま
時間|9:00~17:00 (入館は 16:30まで)
休館日|月曜日(2/23は開館)、2/24(火)
観覧料|一般:1200円(950円)
学生:750円(600円)
高校生:500円(400円)
小中学生:300円(240円)
*( )内は前売料金・20名以上の団体料金
※未就学児、障がいのある方・難病患者の方・要介護者等及びその介護者は無料
※企画展のチケットでコレクション展もご覧いただけます。
関連イベント|刷音 鳥取 スペシャル・シルクスクリーン印刷会
②工藤夏海×げいまきまき×竹川宣彰「人形劇&シルクスクリーン印刷会」
[日時]3月8日(日) 14:00~16:00
[会場]スタジオ2・3
南京の「刷音」の活動やそれぞれの活動について、人形劇の世界を通じてお話しします。
③潟見陽×竹川宣彰「出張BOOK STORE&シルクスクリーン印刷会」
[日時]3月22日(日) 13:00~17:00
[会場]スタジオ3
LONELINESS BOOKSの店主が、本と書店を紹介し、「刷音」のメンバーとして南京で活動した経験を話します。
主催| CONNEXIONS 展実行委員会(鳥取県、鳥取県立美術館パートナーズ、日本海テレビ、TPlat)
公式サイト|https://tottori-moa.jp/exhibition/view/exhibition-04-2/
展覧会チラシ| https://tottori-moa.jp/wpcontent/uploads/2025/11/CONNEXIONS_Flyer_web_s.pdf
オンラインチケット|https://artsticker.app/events/98408
※スムーズにご入場いただけるよう、オンラインチケットを販売中です。
※会期中は美術館窓口でも当日券を販売いたします。