淀川テクニック(アーティスト)#2
アイディアがぱっと繋がる瞬間、一番テンションが上がります

ゴミや漂流物などを使い、様々な造形物を制作することで知られるアーティスト、「淀川テクニック」こと柴田英昭さん。話題は制作に取り組む上での一番の〝面白み”へと展開しました。


- この素材をこういう風に展開していこうというアウトプットは毎回違うと思うのですが、慣れていくというか、技術的にも、経験値があがっていくのかなと思います。そういうところに面白みを感じているんでしょうか。

淀川テクニック:いや、慣れてくると、だいたい何でも面白くなくなってくるというか…(笑)。そうなんですよ、最初に淀川でやっていた時が一番面白くて、その感覚は結構大事だなと今でも思っていて。
その時の面白みと今の面白みはちょっと違ったりはするんですけど。
そうですね、慣れてきたなと思っていても、見たこともない面白いかたちをいまだに拾ったりもするんで、なかなか慣れてこないかなと思いますね。

- 今の面白みとはどんな点ですか?

淀川テクニック:今も昔もあんま変わんないんですよ。これを言うと誤解されるかもですが、作るのは大変なんであんまり好きじゃないんですよ(笑)。だからと言って、他の人にやってもらうと、「ちがう」とかそれはそれで文句言う。結局自分で作るんです(笑)。
アイディアを出す瞬間が楽しいですね。コンセプトみたいなものが毎回あって、頭の中でそれを粘土みたいに伸ばしたりちぎったり引っ付けたりして、あっ!て思いつくときが一番楽しくって。で、それに近づけるために漂流物とかを探して作るんですね。さっきも言ったように、頭の中で思っているものを急いで作ろうとしているのに、ゴミのせいで結局うまく作れないっていうときがあって。作るときは作るときで別の何かこう、全然別の発見みたいなものがあるんですけど。最初のひらめいた時が好きかな。昔から。

淀川テクニック《みんなでゴミになれる!》2014年
淀川テクニック《みんなでゴミになれる!》2014年(部分)
淀川テクニック《みんなでゴミになれる!》2014年(裏面)

アイディアがぱっと繋がる瞬間みたいな、テンションが上がるのが一番そこで、で作っていくうちにだんだん下がってきて(笑)この辺りかな?みたいなところで手を止めて、ちょっと間を置いてから改めてみると、これはこれで面白いんじゃない?って新たな発見があったりして、いつも大体そんな感じで作っています。

淀川テクニック《淀テクブロック》2014年

- 今思い浮かんでいるアイディアはありますか?

淀川テクニック:幾つかはあるんですけど、この間、鳥取大学地域学部教授で「一式飾り」(1)の研究をされている高橋健司先生がいらして。一式飾りについては僕も昔からずっと気になっていて、大阪に住んでる時から知っていました。それで、丁度totto副編集長の濱井丈栄さんに高橋先生を最近紹介していただきお話させてもらったんですけど。一式飾りと僕のやっていることには結構共通する部分があるというか。要するに何か物を別の物に見立てて作るという点が、共通していて僕自身が刺激を受けました。

- 一式飾りは、白磁のお皿なら白磁のお皿で全部作る、金物なら金物で全部作る、そういうことでしたよね。

淀川テクニック:そうです、でも、もので一式というのもあるし、何かの行為一式もあるんですよ。土木作業道具一式とか。
僕が作るのも、実は海や川でに落ちているのも一式なんですよ。

- なるほど、漂流物一式ですね。

淀川テクニック:そう漂流物一式っていうことにもなる。そっからのアイディアの転がし方みたいなものが、いま頭にあって。お話を伺って一式飾りを作っているいろんな方が「こういう目線で作ってるんだな」っていうのが分かったりして、そこの面白さが刺激だったかな。しめしめ、みたいな気持ちになったのが、新しいアイデアのヒントですね。

- 今後の一式飾りのお祭りの時に、柴田さんの作品が出て来たりすると面白いです。

淀川テクニック:そんな風になったらいいなとか思いますね、でもまだ全然予定無いですけれど。

《つづく》

トップ写真、および本文6枚目写真:野口明生
その他の写真:Courtesy of the artist and YUKARI ART

※この記事は、令和2年度「県民立美術館」の実現に向けた地域ネットワーク形成支援補助金を活用して作成しました。また、鳥取県立博物館が発行する「鳥取県立美術館ができるまで」を伝えるフリーペーパー『Pass me!』03号(2020年10月発行予定)の取材に併せてインタビューを実施しました。


1:身近な生活用具である陶器、仏具、金物、茶器、自転車部品等その一式で、神話、歴史上の人物、おとぎ話やテレビ等で話題になったものなどの一場面を独特な発想・技巧を凝らして飾り競う民俗芸術で、島根県(出雲市平田、斐川町直江)鳥取県(南部町法勝寺)等山陰地方の各地で行われている。


淀川テクニック / Yodogawa Technique
柴田英昭(しばたひであき、1976年岡山県生まれ)のアーティスト名。 2003年に大阪・淀川の河川敷を拠点として活動開始。ゴミや漂流物などを使い、様々な造形物を制作する。赴いた土地ならではのゴミや人々との交流を楽しみながら行う滞在制作を得意とし、岡山県・宇野港に常設展示された「宇野のチヌ」「宇野の子チヌ」は特によく知られている。また、東日本大震災で甚大な津波被害を受けた宮城県仙台市若林区で地元の方々の協力のもと被災した防風林を使った作品を制作した。その他、「釜山ビエンナーレ」(2006)やインドネシアで開催された日本現代美術展「KITA!!」(2008)、ドイツ・ハンブルグと大阪で同時開催された「TWINISM」(2009)、モルディブ共和国初の現代美術展「呼吸する環礁―モルディブ・日本現代美術展―」(2012)など海外での展覧会参加も多い。その活動や作品は国内外のテレビ、新聞などのマスメディアで多く取り上げられている他、小学校や中学校の美術の教科書でも大きく紹介されている。 活動開始当初は柴田が大阪文化服装学院で1学年下の友人・松永和也(まつながかずや、1977年熊本県生まれ)に声をかけてはじまったアーティストユニットであったが、 現在は柴田のソロ活動。柴田は「淀川テクニック」として、作品の制作のみならず、その独創的なアイディアを活かした様々なワークショップを全国各地で開催する他、「コラージュ川柳」の発案者・考案者でもある。2018年、「ゴミハンタープロジェクト」を新たにスタート。この活動は淀川テクニックがこれまでの経験をふまえ、国内のみならず世界中のゴミを求めて旅をし、目撃した現状を作品という形で伝えることでゴミ問題をより広く考えるきっかけをつくることを目的にしている。
https://yukari-art.jp/jp/artists/yodogawa-technique/

ライター
水田美世

水田美世

千葉県我孫子市生まれ、鳥取県米子市育ち。東京の出版社勤務を経て2008年から8年間川口市立アートギャラリー・アトリア(埼玉県)の学芸員として勤務。主な担当企画展は〈建畠覚造展〉(2012年)、〈フィールド・リフレクション〉(2014年)など。在職中は、聞こえない人と聞こえる人、見えない人と見える人との作品鑑賞にも力を入れた。出産を機に家族を伴い帰郷。2016年夏から、子どもや子どもに目を向ける人たちのためのスペース「ちいさいおうち」を自宅となりに開く。