波田野州平
映像みんぞく採集
#11 樋口の埋め墓

映像作家の波田野州平を中心に結成された記録集団「現時点プロジェクト」が鳥取県の各地を巡って、観光案内では紹介されない(されるはずのない)場所や物事に熱視線を注ぎ、映像でレポートを提出します。日々の視界を少しだけ広くする報告書。お忙しい1日の隙間にご覧ください。


墓地が好きだ。すべての墓地がそうではないが、墓地を訪れると心が休まる。その中でも私のお気に入りは、この鳥取県西伯郡大山町樋口にある埋め墓だ。ここには豪華な石塔などがなく、置いてあるのは河原で拾ってきたようなどこにでもある石。墓地は集落の外に作られ、死者は北枕、西向きに土葬された。天を向くのではなく、右側を下にすることで顔は西にある住んでいた集落の方を向く。集落の中には、盆や彼岸の時などに参るためのもう一つの墓が作られた。今のように分骨ができないため、髪の毛や爪などを分けて祀った。そちらの墓を参り墓と呼んで区別した。両墓制という日本でも珍しい風習がここに残っている。
この石ころを眺めていると、私も名前のない死者として、こうして葬られたい気持ちになってくる。撮影の間ずっと、心地良い風がたんぽぽを揺らしていた。

このあたりには同じような墓地がひっそり残っています。ぜひ巡ってみてください。
それでは次の隙間でお会いしましょう。

ライター

波田野州平

鳥取生まれ東京在住。辺境と中央を往復して制作(映画を作ったり、ライブを撮ったり、ミュージックビデオを作ったり)しています。今は記録メディアとしての映像の役割にとても興味を持っています。